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July 21, 2008.

科学は未だ生命を定義できていない


7時ごろ起床し、ホテルの1階で朝食。タダでコーヒーが飲めるのはうれしい。無料の朝食がついていてこの宿の値段は破格だ。一人3,350円である。別に変なところに泊まったわけではない。ちゃんとしたビジネスホテル。適度なエアコンと良い椅子とコーヒーがあればリラックスできてしまうbaristaには過剰な贅沢。食後も少しくつろいでから出発する事に。あぁ、そういえば椅子買わなきゃな。

 

地下鉄で映画館に向かい、9時半ごろにはN駅前のミッドランド・スクエアへ。ビル名を書いた時点で駅名を伏せる意味がないのは秘密。映画館以外はまだオープンしておらず、途中のフロアには人影がなく、非日常を感じさせる光景。映画館は5階にあるのだが、途中のエスカレータまわりのデザインが素晴らしく、ビルにありがちな「折り返し・繰り返し」構造ではない。ただ、高所恐怖症の人間にはちょっと怖ろしい光景。

 

で、待望の攻殻機動隊2.0を鑑賞。これは95年の作品なのだが、スカイ・クロラ公開の記念として、スターウォーズの音響を手がけたスカイウォーカーサウンドが音を当てなおし、それに伴い押井監督らの手により3D表現を刷新したもの。折角だから映画館で見たいと、わざわざN市まで来たわけだ。

映像や音響のできは期待以上だった。新しい音声の気持ち悪いぐらいの立体感は非常に素敵。清掃車を追いかける小汚い男の声やちょっとした物音など意外なところであえて6.1chを過剰気味に使い、視聴者にドキッとさせる効果をもたらしていたのも秀逸。銃器の音やヘリの音は完璧。兵器関係はやはりアメリカに一日の長がある。映像のほうはと言うと、セル画との差異を懸念してか、立体感を抑え気味にしたヘリの描写や、海中の泡の表現の方向性など、若干の不満点もないではなかったが、映画館で見てよかったなと言う素晴らしい出来だった。ダイブ前のビルの表現などはあとで旧作の写真を見たところ驚くほどの差だった。伝説のエンディングシーンも完璧。良いものが見られた。

久し振りに見直しての感想は、思っていたよりわかりやすいという事。人形遣いがどういう存在で、何を求め、素子が何を求めたのかなどが、かなり明確に台詞等で表現されている。何度も見ているせいかもしれないし、こういった作品への耐性がついたせいかもしれないが、イノセンスよりわかりやすかったと思う。

 

 

注意:以下完全なネタバレ すでに古典の部類ですが、未視聴の方はブレーキ!!

 

本作のテーマは生命のボーダだ。それを2つの方向から取り扱っている。一方は「自分はどこまでが自分か」もう一方は「何を持って生命と認めるか」である。

自分は生態学をやっていたので、「生命」に関してよく思いを馳せる事があった。例えば「自分とはどこまでが自分か?」の結論は「生命は脳内の電気信号にあらず」だった。例えば、手足がなくなっても人は死なないが、手足のフィードバックがなくなる事で思想は変化する。物理的肉体が完全になくなれば、痛み・疲れ・生理的欲求などに対する評価が変化し、元の人間とは別の人格になるだろう。端的に言えば人の心が理解できなくなる。肉体の老化などのフィードバックにより変化していくのが本来の人格であるなら、魂は肉体に依存しないが同時に肉体と不可分だと自分は結論付けた。矛盾点を止揚して理解するわけだ。一方で、それらをバーチャルに模した物があれば人は人として生きていけるとも言える。マトリックスの世界だ。しかし、それは新たに得たバーチャルによる「肉体」ともいえるだろう。

本作では、草薙素子の台詞からわかるとおり、「貸与された擬体」だけでなく、「ネットへ接続する行為、その権利」まで含めて自分を形作る一部であると定義している。彼女はそれを奪われれば自分は自分でなくなるという。すなわち、権利や環境、ネットの情報も欠損しがたい手足の一部だと評価しているわけだ。

「何を持って生命と認めるか」に関しての結論は作中に明示されている。「科学は未だ生命を定義できていない」のだ。情報の海から自然発生的に現れた「人形遣い」が自らを自信を持って「生命だ」と表現しているのに対し、生命として誕生したはずの素子が「本体はとっくに死んでいて自分はその複製では?そもそもオリジナルなどなかったのでは?」と自己の存在に不安を感じている点が面白い。人形遣いはその素子の不安に対し、癒しを与えたのだろう。人形遣いが自然発生した生命として認められるなら、仮に現在の素子が複製であろうと、オリジナル無きプログラムであろうと、生命として認められるからだ。押井氏が「本作は素子、人形遣い、バトーの三角関係の話だ」と説明していたが、この「癒し」こそが素子と人形遣いを両思いたらしめた要因だろう。見返りに人形遣いが求めたものは、衰える肉体である。完全な生命として肉体が不可分だと感じ取ったのかもしれない。ラスト間際の「元の草薙素子も人形遣いもここにはいない」との台詞はつまり、二人の情報=遺伝子情報の融合による新たな個体の誕生を意味するのだから、あの多脚戦車前でのダイブは、バトーを目の前にした性行為以外の何者でもなく、監督の「女に寝取られた方がバトーは悔しいのではないか」の台詞には納得させられた。そう考えるとラストシーンで子供の擬体を採用したのは、「バトーの前にいるのが素子ではなく、素子の子供だ」という事の暗喩だろう。バトーにはもう素子を追いかける事すら出来ない。完全な失恋である。

 

注意:ネタバレここまで

 

 

せっかくだから、イノセンスと2枚セットのBDボックスとかが発売されないかなぁ。ただ、DVDに比べまだまだ高いから手が出ないかも。自分は沢山の作品を次々見るタイプではなく、好きな作品を繰り返し見るタイプなので、できれば購入したくはあるのだが。単品で冬に発売される事は決定されているが、値段はいくらになるのか...。10回見たとしてもレンタルで3,000円。BDが8,000円だとちょっと高すぎる。その点、DVDの1500円セールなどは実にリーズナブル。良い時代だな。

 

昼食は山本屋をめざすも行列。というかどこもかしこも行列。N駅周辺では並ばないと何も食べられないのか??スガキヤにまで列が出来ていたのには驚いた。結局適当な店で味噌カツを食べてから、ビックカメラとハンズへ。2次会の景品などの下見を行なった。

 

帰宅後はGT5 Prologueなどゲームをしたり。Ghost in the shellの旧作を見ようかとも思ったが、今日の映像がぼやけると勿体無いと思い我慢した。しばらくは自制しよう。せっかくだからイノセンスをBDレンタルで見たいのだが、まだTSUTAYAぐらいしかBDのレンタルを開始していないらしい。早く広まらないかなぁ。

 

さて、スカイ・クロラ公開まであと2週間。楽しみだ。しかし、主人公の一人の名前が草薙水素って草薙素子と近すぎる。森氏、押井氏に決まったのは偶然とか言ってるけど、それこそ人形遣い&素子並の相思相愛なのでは??


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