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創造編 -- 鉄は熱いうちに



2009/06/15

油断大敵

今日は配筋の続き。下の写真のような感じで、綺麗に鉄筋が組まれていた..らしい。毎回書くのも面倒なので、ここで定義しておくと、4:3の写真は父がデジカメで撮った物で、16:9の写真はbaristaが携帯で取った物。なので、下の写真は父の撮影である。



見ればわかるように手前部分の配筋も、綺麗に仕上げられていて、先日の「7cmより狭く見える」問題はちゃんと修正されていた。なかなか良好な現場だと思う。この巨大な配筋の塊を見ていると、ちょっと荘厳な気分になる。

設計する際や設備選びの際には、「高い、高すぎる」とうなっていた。しかし、建築とシステムの違いはあるが、同じ「設計」という仕事をする身からみて、これだけの物がこの値段で作っていただけるというのは非常に光栄だ。職業柄、アナログな「作品」に対し、独特の畏怖を感じる。


とまぁ、落ち着いたコメントを書いているが、実はこの写真を見たのは仕事後、家に帰ってからであり、帰り道に立ち寄ったら「既にコンクリが打設されている!」という状況だったので、家で父と大いに驚きを共有した後である。ホント、いつの間に施工しているんだ、うちの大工達は。



2009/06/16

鉄コン筋クリート

昨晩既に基礎コンが打設されていたので、気合いで早起きし、AM6:30ぐらいに現地へ。写真をバシバシ撮影してから出勤することにした。撮影が終わって駅に向かう最中に、いつも朝の電車が一緒になるお姉さんが、2軒隣に住んでいることが発覚。世間は実に狭い。



ってなわけで、順に解説。上の写真は階段側(北側)から南を見渡したところ。中央がリビングで奥がパティオ。基礎の立ち上がり部分がまだ無いせいで、非常に広々として見える。写真右下の配管は、二階浴室との給排水のための物。


お次は同じく南から玄関前を。非常にイメージの湧く一枚。玄関前に変に長い鉄筋が残っているが、同じような物が裏口にも残されていた。構造上必要な物なのだろうか。


続いて1階トイレ前。ベタ基礎の場合、基礎部分が全てコンクリで覆われるので、配管部分についてはこのように前もってスリーブ配管をしておくことになる。後で穴を空けると弱くなりがちなので、計画的に穴を残しておくわけだ。手前がトイレ用で、奥が洗面台のための物。


パティオを南東側より。背の高い鉄筋がある部分が、パティオへの扉部分。パティオの中心部はくりぬかれたまま。どう処理されるのだろう。


パティオを南西側から。中央左に見えるのが、おそらく二階バルコニからの雨樋を受けるための配管。東側の物に比べやや南にあるのは、リビングエアコンの室外機設置の面積を稼ぐ必要がある為。逆に東側は台所側からの扉がつくため、ギリギリ北に寄せてある。


南から和室部分。坪庭は和室からも見える設計。4畳半だが、壁がない今は非常に広く見える。


西側パントリー前から。台所への配管を行うため、パントリー床にもスリーブ配管が見える。


型枠はこんな感じ。金属の型枠を周りからがっちりと押さえている。型枠は木枠でも金属枠でも違いはないが、金属枠の方がやや表面が滑らかに成りやすいらしい。もっとも、基礎が完成した後に化粧モルタルを施すので型枠による違いはあまり気にしなくても良いとのこと。


型枠の残りと剥離剤のタンク。型枠にコンクリを打設する前にはこの剥離剤を塗布する。基礎工事などの際に近くを通りがかると油臭いのはこのため。打設したての基礎の表面に黒い水染みがあったら、この剥離剤の痕であることが殆ど。


余った型枠やペットボトルのゴミなどは綺麗に片付けられていた。この辺り、きちんとした作業員ばかりで安心。



ところでなぜコンクリに鉄筋が必要なのかはご存じだろうか?実はコンクリートは圧縮に対しては非常に強いが、伸張に対して弱い。一方、鉄は圧縮に対してはそれ程強くないが伸張に対して強いため、鉄筋を入れることでコンクリートの弱点をカバーしているわけだ。


鉄とコンクリートの相性の良さはそれだけではない。鉄の弱点と言えば錆びやすいことである。ところが、コンクリートはアルカリ性のため、コンクリート中の鉄筋は長期間錆びることがない。ちょっとぐらい錆びた鉄筋を使っても、還元されて錆が消えるぐらいだ。コンクリートは空気中で徐々に中和されて中性化するが、その速度は年間1mm程度。「配筋と型枠の間隔は7cm程度必要」と以前の日記で書いたが、それはつまり、鉄筋が70年錆びないことを意味する。1cmの差は非常に大きい。配筋を地面に直接おかずサイコロを挟んでいるのも同じ理由。

さらに、ここからがとても素敵な話。どれだけ相性がよい材料でも、混合すると往々にして問題が起こる。例えば、温度による膨張率の違いで、ずれたりひびが入ったりしてしまう。ところが、コンクリートと鉄の熱による膨張率はほぼ同じなのだ。そのため、酷暑にも極寒にもずれたり隙間が空いたりする事がない。まさに奇跡的に相性の良い材料なのだ。


とまぁ、そんなわけで、鉄筋コンクリートを見ると、何だか神聖な気分になる。「鉄コン筋クリート」という漫画作品があるが、あのタイトルは、シロとクロが、真反対の性質を持ちながら、相互に補完し合う関係にある事からの連想による物だろう。気づいた人はいるだろうか。

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