チョコレート・ソルジャー監督:ラーチェン・リムタラクーン/ 原作:/ 64点
■罠にはまっちゃってるなぁ
※本作の点数は全てアクションだけで稼いだものです。ストーリーだけなら5点ぐらいです。マジで。
チョコレート・ソルジャーは名作チョコレート・ファイターの主演により、一気に世界一のアクション女優と化したジージャー・ヤーニン主演の格闘映画である。タイトルだけ見ると続編かと思ってしまうが、内容は全く関係がない。無問題と無問題2と構造的には全く同じである。続編のほうが面白くないのも同じである。ヤレヤレ。 なんでこんなことになっているのかと思ったのだが、どうもこれ、日本の配給会社の問題っぽい。原題はRaging Phoenixであり、単に配給会社が前作が売れたから二作目っぽくしておこうと余計なおせっかいをしたのが原因っぽい。いらんことすんなよなぁ。前作のタイトルのチョコレートの意味もちゃんと理解してないんじゃないかと不信感を感じてしまう。なお原題のRaging Phoenixってのは怒り狂う不死鳥って意味。まぁ、その、いいか。
以下、ネタバレなんか一切気にせずそのまま書くので注意。何故なら本作品のストーリー部分は要らない子なんでネタバレなんか気にする必要がないからである。
本作のジージャーはチャラい女である。暗い家庭の事情がとか、色々設定はあるけど、要は考えが甘いヤン姉に過ぎない。で、誘拐されそうになった所を助けてもらった男がちょっと気に入ってそこで一緒に暮らしつつ、そいつらに憲法を教えてもらう。それが「泥酔拳」と呼ばれる架空の憲法なのだ。 先にストーリーだけさらっておくと、恋人がさらわれたとか妹がとか、その目的が涙から製造するフェロモン香水の製造でとか、悪い意味で漫画としか思えないストーリー展開にとにかくゲンナリ。ストーリーの随所が甘くて、真剣に泣かせようとしているのか、笑わせようとしているのか理解に苦しむ脚本である。 ハイキック・ガール!の時にも書いたが、格闘映画に凝ったストーリーなんて蛇足である。前作みたいに、彼女の強さに必然性を持たせるための有機的理由として構築するならまだしも、中途半端に涙を誘おうとしたのは明らかに蛇足だと思う。 そもそも泥酔拳がストーリーに絡んでいない。泥酔拳は痛み(心の痛み)を力に変えるのだ、とか言ってたけど、それ酔っ払う必要ないよね?実際最後の戦いの時には誰もお酒を飲まずに戦ってたので、泥酔拳って名前はどうなんだ、って事になってしまう。心の痛みでパワーアップしたいのなら、獅子咆哮弾で充分である(出展:らんま1/2)。
さて、箸にも棒にもかからないストーリーの事は忘れて、肝心の格闘シーン。今回泥酔拳なんていう架空の拳法を生み出したのは新しい動きを産み出すためである。で、ジージャー及びその脇役たちが繰り出すアクションは本当に素晴らしい。格闘シーンの凄さだけで言えば前作チョコレート・ファイターを超えていると思う。 泥酔拳はカポエラとダンスを足して2で割ったような動きがベース。ってカポエラ自身がそもそもダンスのふりをした格闘技ではあるが。ピッグシット(ちなみに豚のションベンって意味)の技にはそのダンス部分が強く出ていて、ブレイクダンスにおけるフリーズの動きが戦いに見事に組み込まれているので必見である。あれワイヤー無しでやってるのかな?だといいなぁ。 また、酔拳をモチーフにしていることもあり、相手と近距離で戦うことが非常に多い。都合、逆関節をとって動きを制した状態からの打撃など、超近接技が連続で繰り広げられる。バキや餓狼伝のファンになら「虎王」的な技と言えば理解しやすいかな。これまで様々な格闘映画を見てきたが、まだまだこんなに新しい技が産み出せるのかと感心した。 上記のように動きは非常に良かったので、その動きを有機的にストーリーに結びつけるために、素直に「酔拳」的アプローチでよかったんじゃないかなぁと思う。物語を単純かつ面白い方向に調整したほうが、肝心の格闘が楽しめたはずだ。古いジャッキーチェンの映画はそういう意味で無駄なく楽しい。
なお、本作品はところどころワイヤーアクションと思われる動きが挟み込まれる。蹴られたりした相手がすっ飛ぶ分には何の違和感も感じないが、反撃するジージャーの動きなんかにワイヤーを挟まれるとちょっと萎える。格ゲーじゃないんだから、空中で方向転換だけは勘弁し欲しいものだ。
ってなわけで本作を見るときにはストーリー部分は早送り。格闘シーンは繰り返して鑑賞ってのがお薦め。ストーリーは、本当に酷い。ってこのレビュー書くために監督を確認したら、監督変わってんじゃん。やれやれ。
Copyright barista 2010 - All rights reserved. |