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きみはポラリス

作者:三浦しをん/ 原作:/ 64点
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■いつも遠くに輝いているもの

 

「きみはポラリス」は三浦しをんによる短篇集である。どういうコンセプトの作品なのか知らないままで読んだのだが、後書きによると方々で依頼された恋愛をモチーフにした短編作品を集めたものだそうな。個人的に純粋な恋愛小説はあまり好みではないため、というかそういうのを喜ぶ年齢を卒業してしまったため、こういうジャンルの作品に対する評価はどうしたって低くなってしまう。その辺りはご了承いただきたい。

中にはかなり好きなものもあって、平均を取れば悪くない作品。ただね、読み終わってこうやって感想を書いていても1作1作の印象がどれも薄くて、半分ぐらいはパラパラ読み返しながら書いてるぐらいなんだよね....。

 

本作品に収録される短編に共通するテーマは、「届かない思い」だと思う。いつも夜空の中心で輝いているけど、決して手が届くことはない、そういった対象への恋愛を扱ったものが多いように思う。ってなわけで、きみはポラリス(Polaris = 北極星)というタイトルなのだろう。

 

【永遠に完成しない二通の手紙】

アホな友人にラブレターの代筆を頼まれる話。ってかある1行で全てが表現できるのだが、それ書くとこの物語が終わってしまうので、ネタバレ内に書きます。

 

【裏切らないこと】

子供ができたばかりの夫婦の旦那が奥さんの意外な行動を目撃する。旦那は仕事で意外な偶然とぶつかる。偶然の内容が秀逸。

 

【私たちがしたこと】

喫茶店に務める女が意外な事実を語り始める。世にも奇妙な物語的なストーリー。

 

【夜にあふれるもの】

信仰心と家庭の話。

 

【骨片】

田舎でとても地味な家業をつぐ運命の女が、最後の抵抗として大学で文学を学ぶ。憧れた先生は呆気なく亡くなってしまい、その葬儀に立ち会った彼女はこっそり先生の遺骨の一部を持ち帰ってしまうのだった。

不思議な祖母の話とからみ合って、読者は異質な空間に取り込まれる。本短篇集の中では比較的印象に残った作品。

 

【ペーパークラフト】

夫が久しぶりにであった後輩を家に連れて帰ってきた。彼はペーパークラフトのデザイナらしく、子供にペーパークラフトをプレゼントしてくれた。奔放で子供への愛が足りないように見える夫の描写も相まって、明らかに不倫ムードが漂いまくっているのだが、物語は意外な方向に展開する。これも結構印象深かった作品。

 

【森を歩く】

正体不明の同居人の話。意外とほのぼのとしていて嫌いじゃない。ちょっと「植物図鑑」を思い出してしまった。

 

【優雅な生活】

とあるOLが会社のみんなの影響で突然ロハスな生活を始めようとする。物書きを生業とする同居人の男は、そんなのは嫌だと最初は反発するのだが、話し合いの結果、突然「超」協力的になる。この物語は大好き。ってか同居人の男が大好きだ。(BL的意味ではなく)

 

【春太の毎日】

とある女性に拾われて、一緒に住む事になった春太のぼやき小説。なんせその女性は春太のことを頬っておいて、外から男を連れ込んだりするのだ。ネタばれしたらちっとも面白く無いので、この先は書かない。

 

【冬の一等星】

タイトルのポラリスはここから取ったのだろう。子供の頃、偶然誘拐された経験から、車の後部座席で寝るのが癖になってしまった女の話。

 

【永遠に続く手紙の最初の一文】

んと、第一話参照。そいつらの若かりし頃。これを読んで俺に何を言えというのだ。有川浩っぽいよね、文体的には。

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