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東海道戦争

作者:筒井康隆/ 原作:/ 85点
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■下品な笑いと共に人間の本質を抉り出す

 

「東海道戦争」は筒井康隆らしいスラップスティックなショートストーリーを集めた昭和53年の作品である。筒井氏が描くスラップスティックな作品というのは、人間の普通なら醜くて見せないような本質の部分を強調したものが多い。「日本沈没」や「宇宙戦争」などパニック映画ではそういった部分が一部描かれるのだが、彼の手にかかれば、すぐさま新しいタイプの終末を提示したり、日常のちょっとした異変だってパニックの入り口として捉え、あっという間に人間の見苦しい本質を暴きだしてしまうのである。

 

【東海道戦争】

突然東京と大阪が戦争を始めたらというもしも小説である。報道の怖さや滑稽さなどを描くと同時に、戦争に現実味を感じていない現代人(と言ってももう30年以上前の現代人だが)の戦争観を厳しい目で批判しているようにも見える。といっても別段そんな風に構えて読むための作品ではないので、登場人物の見苦しさはさも人ごとであるかのように、指をさして下品にゲラゲラ笑いながら読めばよろしい。

 

【いじめないで】

2作続いて戦争の話。最終戦争の末、生き残ったのが一人の人間と一人のスーパーコンピューターだったら、というお話。コンピュータに判断を委ねた結果、とんでもない理由での終末を迎えるというタイプのSFは多い。本作品も広義にはそれと同じといって良いだろう。冷静に考えると非常に恐ろしい物語なわけだが、本作品はあまり悲壮な雰囲気を持たない。感情を持たないはずのコンピュータと怒りと絶望の底にある最後の人間との間の、痴話喧嘩にも似た会話が物語の主役。映らないテレビや動作の遅いパソコンにいらいらしたりするあたり、人間っていつの間にか機械を擬人化してるよね。

 

【しゃっくり】

突然世の中が特定の10分間を永遠に繰り返し始めたら...というSF。しかも、10分たつと世界は巻戻ってしまうにもかかわらず、記憶はちゃんと連続しているというのだからわけがわからない。無論それに対し科学的説明をなんて展開になるはずもなく、その狂った状況下での人間の狂気を描いた作品。筒井氏らしくておすすめの作品の一つ。そういや、ジョジョの奇妙な冒険にそんな能力のスタンドが登場したよね...。

 

【群猫】

とある場所に閉じ込められた、巨大な顎をもった敵と、それに対抗する「猫」たちの物語。どちらも閉じ込められたことが原因で、特殊な能力を持つよう進化を遂げており、その戦いには壮大なドラマが展開される。最後の結末ですべての悲哀に「オチ」をつけている形ではあるものの、名作「冒険者たち」におけるイタチとネズミのような感動を併せ持っている。個人的に一押しの作品。

 

【チューリップ・チューリップ】

タイムマシンを発明した男の繰り広げるドタバタ劇。1つのネタを最後まで引っ張って、馬鹿らしい笑いにつなげた作品。

 

【うるさがた】

遥か宇宙の彼方で働く男の相棒は、アンドロイド一人だけだった。ところがこいつが高校男子に対する母親のように、とにかくうるさい。黙れと反抗しても、機械であるがゆえの徹底的な正論により結局黙るしかない状況に追いやられ、余計にストレスが貯まる一方。ところが、とあるトラブルの発生によりこの状況はより一層悪化する。下品な結末にニヤリと笑ってしまう作品。

 

【お紺昇天】

平たく言えば車に対する愛情を描いた作品である。自動車やパソコンなど、男性は比較的長く使う機械に愛情を持つものだが、コンピュータが進化し擬似的な人格に近いものを持ち始めるとその思いはより一層深いものとなるだろう。笑うべき作品なのだろうが読んでいてちょっと泣きそうになってしまう作品。意外と筒井氏にもそういう部分は有るのではないだろうか。

 

【やぶれかぶれのオロ氏】

後暗いところの多い政治家が、人間のレポーターに痛い所を突かれるのをおそれ、ロボットカメラマンばかりを集めて記者会見を開く話。もちろん裏目に出るであろうことは敬虔な筒井ファンなら想像がつく事だと思う。個人的に好きだったのは「爆発」のシーン。タチコマが「自己矛盾のパラドックスを」というセリフを語るエピソードを思い出してしまった。

 

【堕地獄仏法】

厳しい言論統制下での小説家の姿を描いた作品。「図書館戦争シリーズ」を読んだ際に、最初に思い出したのはこの短編だったのだが、筒井作品を順に読み返してみてようやく発見、作品名が判明した。

ちょっと今となってはこんな過激な作品出せなさそうだけど、「恍瞑党」というどう考えても「公明党」のパロディと思われる政党が政権を握り、「正教新聞」と呼ばれる「聖教新聞」のパロディと思われる新聞以外はマイナー誌となってしまった世界を描いたものである。設定が冗談ぽいから目立たないだけで、言論統制下での作家の姿を描いた作品としては非常にリアリティに富んだものとなっている。

言論の自由は水と同じぐらいその大切さを忘れやすいものである。図書館戦争で楽しく勉強したら、この作品を読んでちょっとリアルな怖さも味わってもらいたいと思う。

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