サイト内検索:  

富豪刑事

作者:筒井康隆/ 原作:/ 78点
【送料無料】富豪刑事

【送料無料】富豪刑事
価格:460円(税込、送料別)

■お金で解決、せつな〜い人間

 

上記で「マーチンとプーチンだ!」とわかった人は友達。「富豪刑事」は筒井康隆の手により昭和59年に発行されたミステリ小説である。ちなみにこのレビューを書く今日まで「フゴウデカ」だと思っていたのだが、どうやら「フゴウケイジ」が正しいらしい。

数年前にドラマ化されたため、タイトルをご存じの方は多いと思うが、原作小説を読んだ事のある方は少ないのではと思う。原作の主人公は神戸大輔という男性なのだが、ドラマ版では神戸美和子という女婿となっており、主役の美和子役は深田恭子が演じている。

この主役の性別変更について「確かに深田恭子は金持ちのお嬢っぽいし、好きな女優の一人だけど、原作のあのシーンとかどうなるんだろう??」と非常に疑問だったのだが、今回このレビューを書くにあたってWikipediaで調べたところ、脚本には筒井康隆ご本人が関わっており、「既に設定が現代にそぐわなくなったから性別を変えた」と説明しているとのこと。ドラマ版はまだ見ていないので、俄然観てみたくなった。

ちなみに、1985年には一度ドラマ化の話があったのだが、「脚本は全て脚本家オリジナル」「後でドラマのノベライズを筒井康隆がやる」などの条件を付けられた上、筒井康隆の「せめて脚本に少し意見させてくれ」という願いもかなわなかったため、頓挫したのだという。残念な気もするが、お陰で深田恭子主演で見られるのだから、結果往来とも言える。

 

さて、前置きが長くなったが、小説自身の解説をしよう。この小説のコンセプトは「もしも刑事が大富豪だったら」というものである。「なんだよそれだったら探偵が金持ちの森博嗣のS&Mシリーズと同じじゃん」などという人がいるかも知れないが、まぁ待ちなさい。そこから先が根本的に違って、S&Mシリーズは単にキャラクタの個性として大金持ちなだけなのだが、富豪刑事ではその豊富な財力を事件解決に直接役立ててしまうのである。

また、この作品の新規性はそれだけではない。物語は「お金で解決」という新規性に頼らず、ちゃんとしたミステリ小説としてのトリックを内包している。また、筒井氏特有のドタバタした笑いの要素も含んでいる。しかしそれだけではなく、さらにプラスアルファがあるのだ。それは極力パターン化を避けている事である。毎回トリックが違うとかそういうレベルの話ではない。物語全体のパターンが違う上に、文書構造もまるで違うスタイルで描かれているのだ。

実はちょうど先日レビューを書いたばかりの「言語姦覚」において筒井氏は「シリーズ作品がパターン化されてしまうのが嫌だ」というような事を語っていた。正にその「シリーズ化によるマンネリ」を打破するための挑戦が本作品中でなされているのだ。「いやいやどんなシリーズ作家だってマンネリ化しないように毎回話を変えてるよ!」と思った方は一度本作を読んでほしい。多分変えてるレイヤーが違うのが理解していただけると思うので。

 

【富豪刑事の囮】

5億円強奪事件はもはや時効があと僅かに迫っていた。56人の容疑者は長年の調査の末、4人にまで絞り込むことができた。しかし彼らはあくまで容疑者であり、逮捕令状を取ることのできるほどの証拠がない以上、思い切った行動も出来ず、操作は行き詰っていた。彼らの中から犯人をあぶり出すために、主人公の富豪刑事こと神戸大助は彼らに大金を使わせるという案を思いつき、彼の豊富は財力にモノを言わせた作戦を立てるのだった。

以下、ややネタバレ

 

【密室の富豪刑事】

とある鋳造会社の社長室で社長が焼死した。現場は鍵がかかった密室状態となっており、現場には特に燃えやすいものは見当たらなかった。動機的に怪しいのは、直前に社長のもとを訪れたライバル会社の社長であるが、その殺害の手段が不明であり、証拠も無いため、逮捕には至らない。その殺害の手段をあきらかにするために、神戸大輔はその豊富な財力を使ったあるトリックを仕掛けるのだった。

以下、ややネタバレ。

 

【富豪刑事のスティング】

とある会社の社長息子が誘拐され、身代金として500万円が要求された。社長は息子のみを案じ、警察には届けずに500万円を手渡したが、息子は返してもらえず、更に500万円を請求されたのだという。1回目の引渡しの場所で聴きこみ調査に入る警察だが、めぼしい目撃談はなく、犯人の目星はつかない。

とてもじゃないがもう500万円の身代金など準備できないという社長に、警察からだとバレないように現金を準備する大助だが、事件は思わぬ方法に進むのだった。

以下、手法に関するネタバレ

 

【ホテルの富豪刑事】

関西のある暴力団と関東のある暴力団がほぼ全員、主人公たちの管轄の街に集まり、談合を始めるという情報が入った。何が起こるかわからないから、彼らの宿泊地の周囲を警備したいところだったが、あまりにも範囲が広くなるため現実には不可能だった。そこで警備を実現しようと大助がある方法を提案するのだった。

以下、手法に及びその後の展開に関するネタバレ

【送料無料】富豪刑事デラックス DVD-BOX

【送料無料】富豪刑事デラックス DVD-BOX
価格:15,919円(税込、送料別)

【送料無料】アガサ・クリスティ-99の謎

【送料無料】アガサ・クリスティ-99の謎
価格:693円(税込、送料別)