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図書館戦争 図書館戦争シリーズ��
 【送料無料】図書館戦争 |
■今、若者に読んでほしい小説No. 1
※難しい話がしばらく続きますが、面倒な方はここまでジャンプしてください。とにかくこの本を読むべし！
「図書館戦争」は有川浩による大ヒットシリーズの第１作目である。アニメ化もされた超有名作品なので、今更説明は不要かとも思うが、一応舞台設定を説明しておこう。作品冒頭は主人公「郁」の軍事訓練シーン、しかも戦場のヴァルキュリアばりのややキャピキャピした訓練シーンが展開される。一体彼女らがなんのために訓練を行っているのか、それは以下のような説明で明らかにされる。
--- 公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律として「メディア良化法」が成立・施工されたのは昭和最終年度である。----
図書館戦争の世界では、人権保護の観点により「メディア良化法」なる法律が制定され、本来不可侵で有るべき言論の自由が、結果的に一部制限される事態となっている。それに対し、「図書館の自由に関する宣言」を掲げ、その検閲に対抗すべく立ち上がったのが、図書特殊部隊である。
２つの団体間の争いは激しさを増し、一般市民に被害を及ぼさないこと、互いの殺戮を目的とした攻撃を禁ずることを条件に、銃火器の利用すら認可されていた。都合、検閲対象となる本を保管する図書館に対し、検閲のためにメディア良化部隊が攻撃・侵入を試み、図書特殊部隊が守るという形で戦闘は展開される。
一見すると、ハチャメチャなSF設定に聞こえるがそうではない。これは民主主義国家において最も大切な、「言論・表現の自由」を守るべく地方公務員の立場で国家機関と戦う、自由のための戦いの物語なのである。あまりに恵まれているがゆえに、水の大切さをあまり認識していないのと同様、日本人は表現の自由の大切さをあまり理解していない。言論統制はファシズムの始まりであり、ファシズムの全てと言っても良い。統制は国民の不平の声を封じ、反対意見を排除し、そして外部からの正しい情報を遮断する。
したがって、言論や表現は「欠片たりとも」規制されるべきではない。TVや出版社が自主規制する分にはまぁ、許容範囲である。しかし、法による「規制」は全く許されるべきではない行為である。１つでも規制の事実を作れば、境界線はなし崩し的に広がってしまう。したがって、東京都の件の表現規制条例は戦後最悪の条例だと言って良い。東京都は全体主義に一歩近づいたと言える。
本作に登場する「人権を守るための表現の規制」はある程度しょうがないだろう、と思う方もいるかも知れないのので、ここで反論しておこう。例えばそういう意見を持ったあなたが「人権を守るために一部規制を行うのは仕方がない。良識ある人間であればそれを悪用する事は考えられない」と意見を述べたとする。
「規制」の許可された世界では、『「良識ある人間」という事は「良識のあるなし」で人間を二分化し、差別しているのではないか。これは先日行き過ぎた規制を行おうとして処罰された○○氏に対する重大なる人権侵害である』などと評され、あなたの意見自身が規制され、処罰されるかもしれない。罰せられたあなたを助けようと弁護する人の言葉も規制されるかもしれない。
一度規制を許せば、その影響範囲は権力者によって自由に拡張可能である。言論・表現の自由は権力者に一般市民が対抗できる、唯一無二の、最強の武器なのだ。これを手放せば、多かれ少なかれ民主主義は没する。
さて、上記のようなお話を理解していただいた上で、現在民主党により提案されている人権侵害救済法案に目を向けてほしい。問題点についてはここに非常にわかりやすく説明されているので、できればこのページを熟読してから、もう一度図書館戦争を読みなおしてほしい。彼らが戦う本当の意味が理解できるはずだ。※とある政党のページみたいですが、僕は別にそこを支持してません。内容だけ参考にしてください。
今日本は、民主党の手により民主主義を手放しかけていると言っても過言ではない。この国民の無関心を利用した暴挙に対して、発言が規制される前に、国民の大いなる反対意見を期待している。
このようなタイミングで、ライトノベルとしての読みやすさを持ったままで主題をぶらさず、図書館戦争を書いた有川浩に驚きを禁じえない。この作品が読者の目に触れ、アニメとして若者の脳内に刻み込まれたという事実は、革命的に素晴らしい出来事だった。もし民主党の思惑通りに法案が通り、日本が社会主義的に住みにくくなり、それが革命によって打破されたとしたら、有川浩という作家は歴史書に名の残る作家となるであろう事は疑いない。そんな未来まで続くであろう功績を評価し、記念すべき第１巻の評価は100点とした。全員読むべし。
以下、各章ごとの感想。なお、ジュエルボックス以外は「図書館の自由に関する宣言」そのままのタイトルとなっている。これは実在の図書館に書いてある宣言である。実に格好良い、民主主義国家として誇るべき宣言だと思う。
【一、図書館は資料収集の自由を有する。】
主人公の郁がなぜ図書隊員に憧れることになったのか、その理由が明らかにされる。訓練では運動神経の良い郁がなぜかあまり評価されず、厳しい扱いを受けることになる。「心配だから厳しく」ではむしろ公私混同だよなぁと思っていたら、そうではなかった。きちんと納得の行く理由が準備されていて共感。このあたりをハイキック・ガール!の西監督にも見習ってほしい。
【二、図書館は資料提供の自由を有する。】
冒頭に図書特殊部隊が設立された原因となった事件、「日野の悪夢」のあらましが明らかとなる。その後はほぼすべての能力が優れている同僚の男「手塚」との確執などがメインテーマ。「お前にはお前の良さが」で終わらせずに、ちゃんとやるべきことを努力させるあたりが心地良い。
【三、図書館は利用者の秘密を守る。】
とある作品をもとに未成年者が凶悪事件を起こす。警察は図書館に対し、彼の読書履歴を公開するよう、要請する。報道は彼の書架をテレビで大写しにし、彼の読書歴等々に問題があったかのように演出する。それに対する図書館の対応は...というのがこの章の主題。
宮崎勤事件を始めとして、性犯罪を含む凶悪犯罪に対し、書籍・ビデオ等々の影響を問うニュースは多い。しかし現実的には性的商品が増えたことにより、それ以前の時代に比べ性犯罪は明らかに減少している事を知るものは少ない。ではなぜこのような事件の度に「影響」が問われるのかといえば、表現を取り締まる法案を通すのにいい機会だから、という狙いがあるのに他ならない。
【四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。】
メデイア良化法に反感を持つ少年たちが、彼れの活動に対し花火を打ち込むというゲリラ的行為でその意思表示を行った。それは大人の意思表示の方法ではない、と彼らを叱る図書特殊部隊の面々だったが、彼らに「大人の」戦い方を教えるのだった。
子供たちにちゃんとしたアンケートを使いちゃんとした反論を行う方法を教え、それを実践する過程が非常に見事。と同時に、アンケートというのは取り方次第でいかにでも世論を操作しうるものであるという、闇の部分も明るみにしている。子供にこういう筋を通させる大人になりたいと思う。
【図書館の自由が侵されるとき、我々は団結して、あくまで自由を守る。】
「日野の悪夢」の真実をありのままに記述した資料を大量に保管した、私設財団保有の施設、情報歴史資料館。それは私設であるがゆえに、メディア良化委員会もなかなか手出しできない、目の上のたんこぶだった。その保有者が他界し、貴重な資料はすべて公立の図書館へと寄贈されることになった。資料の搬送は当然のようにメディア良化委員会に狙われることとなる。資料を守るために、大々的な戦闘が始まる。
物語のフィナーレを飾るにふさわしい、派手なエピソード。こういうのを最後にちゃんと準備することで、ストーリー読みしている人間も大満足だと思う。
【ジュエルボックス】
文庫版にだけ収録された、短編。えっと、甘々なので苦手な人はパスしたほうが良いかも。
なお、故：児玉清氏との対談が非常に素晴らしい。この対談を読むためにも文庫での購入をお勧めします。
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