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カンフーハッスル

監督:周 星馳/ 原作:/ 92点

■馬鹿馬鹿しいんだけど良くできている

 

カンフーハッスルは少林サッカーで一気に有名監督の仲間入りを果たした、チャウ・シンチーの主演・監督作品である。どういう作品かというと、馬鹿っぽいカンフー映画である。以上。なんだけど、これが意外に面白いのだ。

 

元々少林サッカーってのはキャプテン翼にインスパイアされた監督が、そのまま実写化したらおかしな事になるのを逆手に取り、カンフーと融合させることによって、見事なバカ映画として完成させた作品である。少林サッカーとテニスの王子様はキャプテン翼の正統後継者、いや後継作品といって差し支えないと思う。

 

以下、ネタばれ。ストーリーなんか良い意味でどうでも良い映画なので気にすることもないと思うけど、一応隠しておきます。

 

この映画ってば完全にドリフターズレベルのプリミティブな笑いで構成されている。それって褒めてるの?貶しているの?と言われそうだが褒めている。ドリフの凄いところはゲラゲラ笑わなくても先が読めていても、なんとなく見てしまう点だ。通常の漫才は2回見たら面白くなくなるし、オチに意外性がなければ怒りすら覚える。しかし、ドリフの笑いにそういう意外性を求める人はいるだろうか。同じパターンを安心して笑うはずだ。この作品もそういう路線で作っているから、くだらないなぁと思いながらなんとなく見続けてしまうような、不思議な魅力がある。

 

で、そういう構造だから雑に作ってあるのかというとそうではなくて、脚本自体は実に丁寧に作ってある。例えば、棒使いの人間が最後の言葉を英語で残し、「英語じゃわからん」と言うシーンがあるが、実はこれ、主人公がボコボコにやられたシーンで血で棒キャンディーの絵を書いた際の「絵じゃわからん」と天丼構造になっている。そういう細かい笑いをきちんと取りに来る脚本なのだ。

また、中国文化に詳しい人間にだけ理解できる細かいパロディが満載な作品でもある。例えば、wikipediaに紹介してある例で説明すると、大家二人の名前は中国で有名なカンフー小説の登場人物二人のパロディである。二人は楊過と小龍女という名前で登場するのだが、これは元となる作品中では絶世の美男美女という設定である。中国の人なら正体が明かされた瞬間に「えぇ、こんなブサイクな夫婦が!?」と笑うところである。また、如来神掌やその他の極意書の中の憲法の名前も多くは同じ作品からの引用である。詳細はwikipediaを参照して欲しい。

他にもおそらくそうだろうといいう設定としては、例えばカンフーの才能を説明する際の「骨」の話は封神演義などの作品中の仙人骨のパロディだと思われる。どこかに明言されてるかどうかは知らないけど、如来神掌の技はあれ、ウルトラマンのパロディじゃないのかなぁ??

 

なんだかコメディとしての出来についてばかり書いてきたが、カンフー映画としての出来も良い。チョコレート・ファイタートムヤムクンのようなワイヤーレスにこだわった作品も大好きだが、こういう仕掛け満載の作品も非常に面白い。ジャッキーチェンに憧れているとの言の通り、ジャッキー映画に独特な、舞台装置を利用した戦いが実に見事。

以前にハイキック・ガール!を見たときに「めでたくジャッキー・チェンの映画よろしく、なんのひねりもない映画の完成だ。しかし、その方が楽なんじゃないのかなぁ。格闘シーンをメインに見せる邪魔にならないから」と書いたが、笑いとカンフーで構築したこの映画はそれをうまく実現しているのではないかなと思う。「こんなバカ映画に良い評価を下してたまるか!」と思ってても、悔しいことにやっぱり面白い作品だと思うのだ。