カムイ外伝監督:崔 洋一/ 原作:白土三平/ 57点
■残酷さはそれっぽいけど薀蓄が足りない
カムイ外伝は白土三平による同名の漫画を実写映画化した作品である。カムイ役の松山ケンイチとスガル役の小雪の結婚により、予定外の所で有名になってしまった作品だ。ただ、原作が好きなのであまり言いたくないのだが、映画としてはちょっとイマイチ、イマニな感じ。 本作品は原作漫画にも登場する「スガルの島」を映像化したものだという。僕は残念ながら原作を読んだことが....遥か昔にあるものの、記憶に残っていなくて読んでいないのと同じなので、そういう前提での感想であることをご了承ください。
映画は冒頭、カムイが忍になったのかという、生い立ちから始まる。彼は元々非人であった。非人というのは、日本史の授業で習った、士農工商の下の穢多非人の非人である。当時最も差別される立場の人間である。そんな彼は貧しさが故に、忍の道を選ぶこととなった。しかし、今度は自由を求めて抜忍となり、追忍からの追跡に怯えながら生活する立場となってしまったのだ。 冒頭のシーンではそんな彼の忍術の一つ「イズナ落とし」の解説がなされる。これは相手を捕まえて逆さまに飛び降りるという技なのだが、ここで「宇宙刑事」シリーズであるかのような技の解説が入る。この技の解説シーンこそがカムイらしさの象徴である。原作漫画では、それが実現可能かどうかはともかく、新しい忍術が登場すると、必ずの粗原理の説明がなされ、読者は子供心に「修行してこれができるようになろう」と思わされたものだった。なので、このシーンを見た瞬間に、(CGが雑いとはいえ)「カムイをわかってるな」と期待が膨らんだ。 ところが、このような忍術に関する見せ場はここまで。これ以降は「単なる時代劇だっけ」というぐらいに目立った忍術は登場しない。いや、霞斬りは登場するけど、それだけ。原理も説明されないし。原作を覚えてないので忠実なのかどうかは知らないが、連続テレビドラマならともかく、2時間の映画として構築する以上、終盤にあっと言わせるような忍術を登場させ、ジョジョの奇妙な冒険よろしく、精神力に訴えるような知略戦を見せてくれても良かったのではないだろうか。
また、ストーリーも何だかぱっとしない。以下、結末に触れるため、ネタバレ内に書きます。 とまぁ、ネタバレ内のように脚本はどうにもうまくない。さっきWikipediaで調べたらおおまかなストーリーの流れは一致しているようだが原作はどうだったのだろうか...。
とまぁ、こんな感じでどうにも釈然としなかった。「血と骨」の時もそうだったけど、崔監督って脚本的面白さにはあまりこだわらないのかも。どちらもひたすら後味が悪い結末なのも同じ。世間的評価はよくわかんないけど、個人的には好みじゃないな。
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