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ストーリー・セラー

作者:有川 浩/ 原作:/ 93点
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■有川浩の怖さを感じた

 

ストーリー・セラーは有川裕による恋愛小説の傑作である。と、されている作品である。ただし、僕にとってこの作品は恋愛作品と言うよりはホラー作品の範疇に入る。良い意味で本当に怖い作品なのだ。夜中に一人で「世にも奇妙な物語」を見ているかのような、薄ら寒い気分になった。

 

主人公二人は夫婦である。奥さんは「頭を深い思考に使うと寿命が縮む」という奇病にかかってしまう。医者は「テレビを見たりするのは構わないが、それを『何故あの番組は面白いのか』というような、そういう角度で深く突き詰めて考えてはいけない。仕事もやめて、出来る限り考え事をしなようにしなさい」と告げる。しかしそれは彼女にとっては死刑宣告のように非道いアドバイスだった。なぜなら、彼女は小説家だったのである。

そんな重い状況が書かれた後に、物語はちょっと気恥ずかしいような、彼らの出会いや付き合い始めのエピソードの回想へと移るこのあたりで読者は物語のパターンを理解する。「あぁ、はいはい。セカチュウ型の難病+恋愛作品ね」と。この手の架空の病気を使って新たなシチュエーションを産み出す作品は意外と多くて、当サイトでもいまこの瞬間愛しているということ時生などのレビューをこれまでに書いてきた。ではこの作品が同じなのか、というと....同じなのだ。取り敢えずは。取り敢えずと書いた理由は後述するのでしばしお待ちいただきたい。

 

上記で説明した物語が自分には非常に魅力的だった。文書や日本語回しで相手を評価する、という行為に見に覚えがあるからだ。「同じレベルで文学作品の内容について語り合える」というのは本当に魅力的な状況だ。理由はともかく面白いというのと、理由を共有した面白いの間には遥かな距離がある。何を作っても美味しいという大食いの彼氏と、ちょっと一手間かけた工夫に気づいてくれる彼氏に美味しいといってもらえる差と言えばわかりやすいだろうか。

 

そんなわけで「ちょっと出会っった可愛い女の子が死んじゃった」なんて軽薄な映画よりずいぶんと深くのめり込んだ結果、この物語の展開に非常にドキドキさせられ、最後には泣きそうになってしまったのだ。

 

...が、しかし、

 

そこはまだ、ハードカバーの中程。そこから、驚愕の展開が待っていたのだ。

以下、完全なネタバレとなるので未読の人はクリック禁止。

 

とまぁ、嘘と真の区別のつかない、強烈な作品世界は、「作家」という生き物の異質性を感じさせるのに十分。最後の2ページがなかったらこんなに評価を高くはしなかった。凄いな、これ。

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