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フラガール

監督:李相日/ 原作:/ 91点
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■予想を覆して面白かった

 

フラガールは福島県いわき市で実際に行われたフラダンスによる村おこしを映画化した作品である。地味な作品で、大して大々的にプロモーション等を行ったわけでもないのに、ジワジワと人気が出た、非常に評価の高い作品である。とは言うものの、「しずちゃんが笑いを担当し、蒼井優が主演し、うんうん、話題に事欠かないね」と、斜に構えてなかなか手を出してなかったのだが、ちゃんと素晴らしく面白かった。最近の邦画は素晴らしいものが多いな。

 

福島県いわき市は、元々石炭に収入源を頼った、坑山の町だった。しかし、エネルギー源の主流が石油に変わるにつれ、石炭の需要は落ち込み、坑山は廃坑の憂き目にさらされていた。なんとか会社としての生き残りに賭ける坑山会社は当然のように大幅なリストラを開始するが、それに対し残された坑員たちは、何か新しいことを考えるわけではなく、ただただいつか仕事が無くなるまで、結論を先延ばしにしながら石炭を掘り続けるのだった。

新しい需要を産み出すことでそんな閉塞した状況を打破しようと、村長が思いついたのは「ハワイセンター」の設立だった。豊富な温泉による暖房により巨大な温室を作って椰子の木を育て、フラダンスチームを作り、観光事業として成り立たせようとしたのだった。

 

さて、ここで一念発起してフラをやろうと集まった面々は、フラを水商売の一つだと勘違いしていたりと、ものを知らない田舎者ばかり。そこに先生としてやってくるのは借金を背負って、泥酔い状態で現れた往年のスター。生徒の主役級は蒼井優やしずちゃんで、これは三谷幸喜的なドタバタ展開が待っているぞと身構えていたのだが、これがそうはならない。

出だしこそそういった笑いの要素を多少含んでいるものの、物語全体は真剣そのもの。時代の変化を簡単には認められない老人の悲哀や、街おこしを真剣に考えているのに理解してもらえない悔しさ、キケンなのを承知で炭鉱にしがみつきながら生きている街の悲哀など、様々な登場人物の心が非常に情緒的に描かれる。

 

そして、この映画の素晴らしいところは、物語の主役となる踊りが素晴らしいこと。まず、「往年のスター」の踊る姿が本当に美しい。我々のイメージの中のフラと言えば、アロハ・オエーなとても緩いダンスであり、小太りのおばさんが長閑に踊っている姿が頭に浮かぶ人が大半だろう(真剣にフラをやっている方々、すいません)。しかし、一人で踊る先生の姿が本当に凄い。フラにこんなに速くて激しい振り付けがあるとは知らなかった。他の踊りで例えるのも何だが、フラメンコなどを見ているような印象だった。フラの振り付けが全て手話のような意味を持っているという事実も、自分のようなフラ初心者には驚きだと思う。

ところで、主役級2名以外のメンバはおそらくプロのダンサーだと思われるが、その中にいて蒼井優の踊りがさほど見劣りしないのも凄い。元々ダンスをするために産まれてきたかのような体型ではあるが、彼女の踊る姿がほんとうに素晴らしいのだ。プロの目から見ると何点の踊りなのかはわからないが、映画を観る一般人の心を釘付けにするのは間違いない。いやはや凄い。

 

 

なお、福島県いわき市は3/11の地震により、原発事故の地として一気に有名になってしまった。この映画の俳優陣は連名で1,000万円の募金を行ったという。いつかハワイセンターにて再びフラダンサーの踊る姿が見られますように。