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時生

作者:東野圭吾/ 原作:/ 72点
時生

時生

価格:790円(税込、送料別)

■面白いけど惜しい

 

1人息子である時生はグレゴリウス症候群に侵され、末期的な状況を迎えていた。グレゴリウス症候群は遺伝病であり、最初から覚悟の上で作った子供では在ったが、父・拓実と母・麗子は自分たちの子供を作るという選択が正しかったのか否かという、苦悩と悲しみの底にいた。

ところが、時生が今まさに最後のときを迎えようという最中、拓実は麗子に対し、20年前に体験した不思議な思い出話を語り始める。

 

本作品はミステリ作品で有名な東野圭吾による、ややSF/オカルト色の強い文学作品である。おそらく「秘密」が好きだった読者なら気にいるだろう。ネタバレ無しにこの作品を説明することは非常に難しい為、以下は物語の大筋についてのネタバレを含む。ネタバレに敏感な方は注意。

ネタバレ内に書いたとおり、SF/オカルトが余り好きではない人には向かない作品である。また、拓実の思い出話の中の拓実が余りにもどうしようもない人間なため、読んでいてイライラするなど、ちょっと万人には勧めがたい部分もある。そこまで最低の人間に描く必要はあったのか、甚だ疑問。

 

個人的にはSF/オカルト色を消し去った以下のようなバージョンでも読んでみたかった。以下、完全なネタバレ

ただ、barista案の文学寄りの作品は探せばどこにでもありそうな気もするし、どちらが良いという話ではない。そちらの展開で東野圭吾が書いたら、どんな作品になったか、個人的に興味があるだけだ。

 

いろいろ書いたが、暗い話なのに結構ライトに楽しく読める良作。同じ「不治の病」を描いた作品でも、重松清の「カシオペアの丘で」等とは随分カラーが違う。圧倒的にこちらのほうがラクに読めるし万人向けだけど、文学的な格は重松清のほうが圧倒的に上かな。いや、東野圭吾がそれを目指しているわけではないのも解っているので、欠点だといっているわけではないです。単なる分類。