サイト内検索:  

カシオペアの丘で

作者:重松 清/ 原作:/ 75点
【送料無料】カシオペアの丘で(上)

【送料無料】カシオペアの丘で(上)

価格:680円(税込、送料別)

重松 清氏の小説の特徴といえばなんと言ってもその重さであろう。話が暗く重苦しいものが多いという意味でだ。ところが本作品の冒頭はジュウヴナイル作品であるかのように爽やかで、氏にこのような甘酸っぱい世界が描けるのかと、ちょっと驚いた。

しかし、第二章に入った途端、いつもの重々しさに戻り、そのギャップに一旦本を閉じようと思った。というか閉じた。心が折れるぐらいに何もかもが酷すぎる。この人マゾなんじゃないか、というぐらいの重さだ。読んでいてここまで心が辛くなるのだから、書いている重松氏は自殺しそうな気分だったのではないだろうか。何か若いときに嫌なことでもあったのか?

 

本作品はある北海道の片田舎の過去と現在と病と罪を混然一体にして描いた、非常に暗い作品である。しかし、氏が文中に書いていたように、人生というのは明るい部分だけで構成されているわけではない。赤ちゃんが産まれる喜びは、必ず訪れる死の悲しみとのセットでしか味わうことができない。したがって人生の評価は、如何に苦しみや悲しみと付き合うかによって左右されるものなのだろう。

その点でこのカシオペアの丘は様々な立場の人間から見た「不幸」をうまく取り扱っている。主人公目線で一気に描かれた「疾走」とは異なり、場面ごとに切り替わる各登場人物視点での描写が、その主体ごとの不幸の評価基準の違いの表現に一躍買っている。中でも印象的だったのは「許したい心」についての表現だ。以下、1文ややネタバレ

 

「カシオペアの丘で」は設定こそ非常に暗いものの、だからといって嫌な気分で終わる物語ではない。感動や清々しい気分もきちんと味わうことのできる、名作品だ。....なのだが.....だからといって、フィクションでここまで辛い思いをする必要があるのか?と個人的には思う。辛くて途中で何度も本を閉じたぐらいなのだから。

 

そんなわけで、この人生と真正面から向き合った良作。内容は85点だけど、辛かったので75点。気持ちと体力に余裕があるなら、非常に素晴らしい作品です。暗い気持ちの人は読んじゃいけません。

【送料無料】カシオペアの丘で(下)

【送料無料】カシオペアの丘で(下)

価格:680円(税込、送料別)

カシオペアの丘で(上)

カシオペアの丘で(上)

価格:1,575円(税込、送料別)

カシオペアの丘で(下)

カシオペアの丘で(下)

価格:1,575円(税込、送料別)