食堂かたつむり作者:小川 糸/ 原作:/ 49点
■家族ドラマからファンタジーへ……っえぇ!!
※注意 この物語は衝撃的な展開を含むので、かもめ食堂みたいな、ゆるい作品を期待して読むと後悔します。うっかりすると、トラウマになります。迂闊に手を出さないように注意して下さい。
「食堂かたつむり」は「かもめ食堂」とか「雪と珊瑚と」なんかに代表される、脱走&お店オープン系小説である。「雪と珊瑚と」のレビュー中に、「この手の小説の多くは現実味が乏しくて」的な不満を書いたが、この作品はそういう意味では相当に現実味がない。というか、そもそも現実感を出すつもりのない、ファンタジー的アプローチが満載である。なのだが、終盤にとんでもないしっぺ返しを食らうので、要注意の作品である。
以下、ざっくりとした内容に触れます。
主人公の女性は、まぁ、いろいろあって、実家に戻ってきた。彼女の母親はシングルマザーで(どっかで聞いた展開だ)、アムールというスナックのママである。店を建てるための資金は、地元の金持ちのオッサンに用立ててもらったものだ。 主人公はとある精神的ショックにより、口が聞けなくなってしまっている。なのだけど、食べ物屋さんを開こうと決意し、たまたま余っていた建物を、運良く手伝ってくれる人たちのお陰で格安で改装し、さらっと、「食堂かたつむり」という店を開店する。…まだ突っ込まないよ。 で、彼女は自分の店の特徴を決める。彼女の店には1日に1組みしか客を入れない。そして、彼女の店にはメニューをおかず、彼女が客と話をした(声出ないけど)印象で、彼女がメニューを考えるのだ。そして中高生が登場することからも分かる通り、お値段はお値打ちな価格で。ジーザス。これはどんなファンタジーだい??僕にはこの店が商売になるとは、どう考えても思えないんだよ、ハニー!(誰だお前)
以下、結構ネタバレ注意。
ところが、この物語、予想外の方向で辻褄があってくる。なんと彼女の料理を食べると、思いを伝えられなかった2人がカップルになったりとか、そういう魔法のような効果が発揮されるというのだ。きっと彼女の実家は杜王町という所にあって、彼女の父はトニオという名前に違いない。きっと肩こりだって、睡眠不足だってガッツリ治るはずだ。上着を脱ぐ事をオススメします。だわ。 ただ、そういう設定の物語だとわかった瞬間に、物語冒頭に感じた不満点はぶっ飛んだ。そうか、ファンタジー作品じゃしょうがないなと。夢の料理店に採算性を求めるなんてのは、薄汚れた大人の下衆な発想だったなと反省したのだ。なんだよ中学生ぐらいの時に読めばよかったなぁ〜って感じで。 なので、「1日1組しか客を採らない店なのに、予約がいっぱいって、彼女口が聞けないけどどうやって予約取ってるんだろう??」なんて事は一切考えずに読み進めました。全部あの人とかが予約とってきてくれてたんだよね、多分。
だったら、冒頭の複雑な家庭環境とか、そういうの余分だったよなぁ、とか今度はそっちが気になってきたものの、そんな不満も直ぐにぶっ飛んだ。 以下、完全なネタバレ
ってなわけで、ネタバレ内のような怒涛の展開に細かい不満とかそんなのはどうでも良くなった。ただ呆然として読み終わったのみ。異色の作品とはいえ、初めて読む分には面白かったけど、逆に言えば同じ作家が同じ作風の作品をもう一個書いてるのを読んだら、途中で投げるだろうな。取り敢えず、子供に読ませちゃいけません。あと、気の弱い人は肉が食べられなくなったりとか、いろんな副作用があるから、読まないほうが良いですよこれ。 面白いかどうかと関係なく、非オススメ図書だと思う。 Copyright barista 2010 - All rights reserved. |