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アバター

監督:ジェームズ・キャメロン/ 原作:/ 86点

■実は映像だけの作品ではない

 

アバターは3Dで青い人たちが大暴れする大作映画である。監督は巨匠ジェームズ・キャメロン。あとで褒めるから先にけなしておくと、この作品の欠点はやや長すぎる点だと思う。「じゃぁお前ならどこを切るんだ」って言われちゃうと困るけど。最初に映画館で観た時には、「あのシーンいらねぇ!」って感じでいろいろ愚痴っていたのだが、改めて冷静に見なおしてみると、ここそこに監督の意図が見え隠れしちゃって、簡単に切れとは言えなくなっちゃんたんだよね。だから、欠点って言うよりは見るなら覚悟を決めろってところか。ちなみに同監督の作品「タイタニック」は長すぎるのとメディアのネタバレ攻勢がひどかったので見そびれてしまったままだ。実は面白いという話なのでいつか見ようとは思うのだが、今更レンタルするのも妙に恥ずかしかったり。「面白かったぞ!」って方はぜひ僕の背中を押していただきたい。

 

つい先日ターミネーター2のレビューを書いたところだが、キャメロン監督は新しい映像技術を作品に応用するのが抜群に巧いと思う。ゲームにおける一時期のスクウエアのようだ。

映画ファンなら誰でも知っていると思うが(逆にそうでない人は知らないかも知れないので書いておくと)、3D映画の作り方は2種類ある。最初から3Dとして撮影したものと、あとで3D化処理を施したものだ。本作は前者であり、後者とは立体の自然さに格段の差がある。自分はわざわざ2時間かけてi-Maxシアターで観たので、その映像は衝撃的な美しさだった。後日近所のワーナーでアリスを観たらそのあまりの差に愕然とした。

作品の序盤は3Dで驚かしてやろうというサービス精神旺盛なシーンが多い。都合、あまりに立体的すぎてちょっと酔いそうになるシーンもある。しかし序盤を過ぎると表現はやや自然さ重視になるし、見てるこっちの目も慣れる。結果として映画の世界に入り込んだような、圧倒的な没入感が得られるようになる。また、本作品はそのような体験をするのには最適な脚本なので、なおさらである。

 

本作品のタイトル「アバター」とはavatarのことである、って説明になってないか。サマーウォーズを観た人なら分かると思うが、アバターってのはネット上で自分の代わりに表示される代理キャラクタの事である。Amebaの住人ならアメーバピグの事だといえば分かりやすいだろう。これは対戦格闘ゲームなんかにおけるプレイヤーとキャラクタの関係とはちょっと違う。格ゲーのキャラがプレイヤーに操作される別のキャラクタであるのに対し、アバターってのは別世界の存在ではあるものの、あくまでプレイヤー自身を表す存在なのだ。

分かりやすく言うと三次元の物体を二次元の世界に登場させた際に目に映る断面のような存在である。見え方が違うだけで実体は同じもの的な感じだ。辞書でavatarを引くと「(神様等の)化身、権現、具現」ってのが第一意味に出てくる。...むしろだんだん解りにくくなってきたからやめておこうか。

なので、本作品の主人公たちはアバターを操作しているように見えるが、正確には操作ではない。あれは惑星パンドラにおける彼らの化身なのだ。そこの認識を間違えると「操作したロボットでナヴィと仲良くなろうだなんて!」と冷めた目で見ることとなってしまう。

 

主人公のジェイクは過去の戦闘で下半身不随になってしまった傷痍軍人である。研究者であった彼の双子の兄弟が急死したため、急遽代理として惑星にやってきた。何故ならアバターはナヴィの原住民とユーザーの遺伝子を組み合わせて作ったものであり、遺伝子が適合しない限り利用できないものだったからである。

物語の主人公たちは、パンドラの希少鉱物の採掘のために送り込まれてきた集団のメンバだ。希少鉱物は彼らの宗教的中心の地下にあるため、採掘のためにはナヴィ達の了承を勝ち取る必要がある。そのためにメンバ達は学校を作って教育を施したり、取引に利用できるような彼らの欲するものを探したりと努力してきたのだが、どれも失敗に終わっている。

そこで主人公は、いろいろな偶然も重なり、彼らの一員として認められるよう、彼らと同じ行動をし、彼らの儀式を1つずつクリアして、一人前として認められるよう努力するのだった。

 

この後の展開は実際の映像を見るためのお楽しみとして説明しないでおくが、脚本は(臭いシーンが多いのが難点ではあるが)かなり良く出いている。ただ単なる3DSF作品として描いているわけではなくて、様々な裏のテーマが隠されているようだ。

分かりやすい設定の一つは、開拓時代のアメリカ人とネイティブ・アメリカン(ようはインディアンだ)との関係との対比だろう。主人公たちが所蔵する集団は、ネイティブ・アメリカンを追い出した開拓者達の姿と見事に重なる。彼らが奪ったのは土地でも無ければ資源でもない。物欲などに興味がないという価値観をもち、自らの価値観に従って生きる自由、これこそが開拓者達の奪ったものなのだ。昨今のアメリカ映画は自虐的アメリカ批判作品が増えたように思う。自虐的作品ってのは物の見方を多面的にするので積極的に作るのが良かろう。

 

個人的に大興奮だったのは鬼軍曹キャラであるクオリッチの大活躍。マスク無しでの奮闘はナウシカみたいだし、身の回りのあらゆる武器を有効活用して戦う姿はアクション映画の主人公のそれである。悪役じゃなくて主役として、この鬼軍曹が活躍する映画が見たくなってしまった。

 

んなわけで、長々と書いたけど3Dならなお良いけど、2Dでも結構楽しめる作品。「所詮3Dだけが売りの作品」だなんて斜に構える事無く、一度楽しく見ていただきたい。