サマー・ウォーズ監督:細田 守/ 原作:/ 100点
最初に書いておくと、本作品につけた100点は減点法によるものではない。IT業界で働くbaristaとしては、否、多少の知識の有る人間からすれば、設定の突っ込みどころなど満載である。しかし、そんな物は本作品の素晴らしさを欠片ほども汚す事はない。baristaの評価を信じられるあなたは、以下を読むのはやめて今すぐレンタルショップに走るか、Amazonや楽天のサイトに移動すべきである。名作。
本作品の主人公はさえない男子高校生。数学だけが取り柄だったが、数学オリンピックの日本代表を惜しい所で逃し、失意のどん底にいる。彼は友人とともに、巨大なSNSサイト(mixiやセカンドライフのようなもの)である、OZのメンテナンスのバイトを行っていた。このOZは実世界のSNSとは規模が異なり、世界中に広がっており、そのセキュリティの充実から世界のインフラを担うほどに成長していた。つまり、世界の警察や医療すらそのネットワークをベースに成り立っているという世界だ。
夏休み、主人公はナツキという女の先輩にアルバイトに誘われる。このアルバイトをきっかけに主人公を取り巻く物語が始まる。このアルバイトでまず一笑。 「ベタな展開を徹底的に採用する」事で笑いをとるお笑い番組のコーナーがあったが、監督の目指しているものはそれに近い。しかし、それをお笑い番組のような嘲笑をまねく物には仕上げていない。昔まとった青春スーツの気恥ずかしさや、あるあるネタへの協感による、わははという軽い笑いを産み出し、それを見事なリズムで展開させ、圧倒的な躍動感を生み出している。
物語の序盤は大家族の面白さをモチーフにした、辻仁成の「五女夏音」のような展開で笑わせる。しかし、主人公がある物凄い桁数の数字の羅列メールを受け取ったシーンから物語は急転する。 以下、結構ネタバレ。 そこからの展開は正直突込みどころ満載なのだが、実際の所全く気にならない。例えば、パズーが登山家もビックリの登坂力を見せたり、ルパンが驚きの運動神経を見せたり、ガンダムが力学を無視した動きをしているのが気にならないのと同様、物語を面白くするためのご都合主義は欠点とはなり得ないのだ。
本作品は、ちょっぴりの恋愛や老人の持つ人生観、大家族の面白さや、ネット社会の怖さと面白さ、それらを有機的に結びつけて、いろんな見方ができるようにしつつ、リアルさを捨てて馬鹿馬鹿しさや勢いや、ご都合主義で纏め上げ、カリオストロの城のように単に楽しい映画として仕上げきっている。これまで映画を見ていて、こんなに大声を出して笑った事は無い。映画館でみんなでみたら100倍面白かったはずだ。
そんなわけで、この予想外の名作品。素直な目を持った人全てに100点。設定のリアルさが無いと不満な人や、小難しい哲学が語られないと物足りないという人は見なければよろしい。....その代わり、大変損をすることになる。
以下、どうしてもどこが突っ込みどころなのか知りたい人のためのネタバレ情報
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