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ちょんまげぷりん

監督:中村義洋/ 原作:荒木 源/ 78点
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■荒唐無稽なのに何故か考えさせられる

 

ちょんまげぷりんは荒木源による同名の小説を映画化した作品である。どんな内容かというと、タイムスリップで現代の東京にやってきた侍、木島安兵衛が初めて食べたプリンの味に感動し、スイーツ作りに夢中になってしまう話である。おいおいネタバレが過ぎるぞと言われそうだが、DVDのパッケージを見れば分かる範囲なので問題ないだろう。というか、タイトルを見た瞬間にそれぐらいは分かる。そもそもこの映画の魅力はそんなところには無いのでご安心いただきたい。

 

そもそもこの江戸時代からの/江戸時代へのタイムスリップという設定にはいろいろと無理がある。根本的に「言葉はもっと通じないだろう」とか、「そんなに簡単に順応できないだろう」とか、そういう部分の違和感がどうにも拭い去れないからだ。テレビで「BALLAD」をちらっと見たが、あれもなかなか厳しかった。あれはクレヨンしんちゃんだから許される、ゆるい設定なのだと思うのだが....。

本作もまぁ、そういう無理がたたって、冒頭から「オイオイ」と突っ込みっぱなし。ツッコミっぱなしなのだが、そのうち段々おかしくなってくる。おそらく糞真面目に時代考証云々よりも、割りきって面白さを優先しているせいなんだろうけど、目くじら立てる気が途中から無くなって素直に楽しくなる。なんだろうこの見事な脱力感は。

個人的に好きだったのは中途半端に世間ズレした安兵衛が、電子機器なんかの操作を古風な口調で説明するあたり。完全にさんま・タモリの正月ゴルフの「英語禁止ルール」状態。なんだか最近一周回ってこういうプリミティブな笑いが楽しい。

 

で、上記のような特性と、主役たちの家庭環境を考えれば直ぐに想像がつくお涙頂戴の展開のおかげで、この映画は「笑えるのに泣ける」とかなり評判だったらしい。うん、それは否定しない。自分もありきたりだなぁと思いつつ、素直に感動してしまった。それだけの魅力があるのは、細かい脚本の力や、主役3人の演技力によるものなのだろうな。

 

「否定しない」なんて偉そうなことを書いたのは、手のひら返して否定するためなんかではなくて、この映画の魅力はもっと他のところにもあるのではないかと思ったから。

 

最初に感じたのは「仕事」についての扱い。この作品中の登場人物は本当に仕事を大切にしている。(途中、ともさかりえ演じる遊佐ひろ子の言動について「ちょっと自分勝手だろう」と思う場面もあるが)この仕事賛美っぷりは凄い。

以下ネタバレ

ネタバレ内で語ったように、仕事があることの幸せにハッと気付かされるようなシーンが多々あるのだ。

 

その一方で人の幸せについて語るとき、この映画は仕事を一番に据えていない。ネタバレ内で語ったぐらいに仕事賛美が多い作品であるにもかかわらず、結局主人公たちは肝心なときには、家族を最優先する。その姿に、男も女も家族をの事が一番大切なのではないかと感じさせられてしまうのだ。

 

上記のように仕事も家族も大切と男女共通見解として語っている一方で、作品は男女の違いについても強いメッセージを投げかけ視聴者を混乱させる。生態学を長く研究してきた目から見ると、男と女は別の戦略の元に生きる生物である。したがって、男女平等が大切という感性と同時に、男女が別の生物だという「区別」が必要だと思っている。

本作品ではそういう本来父親が担っていた役割や、母親が担ってきた役割をあらためてつきつけられる。安兵衛の恫喝シーンは本当に格好が良かった。「女のくせに云々」などと馬鹿げた前時代的な事を言うつもりはないが、違うものだという認識は必要なのだ。

 

とまぁ、結局どれを主張したいのかがよくわからない所が、実は本映画の良いところではないのかなと思う。優柔不断な立ち位置なのではない。悪さを指摘する視点ではなく、いろんな良さを形にして見せてくれる映画なのだと思う。ひろ子の友人に悪人が一人もいないことも含め、本当に爽やかで楽しくみられる映画だ。子供と見るならBALLADより断然こっちがお薦め。

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