優しい音楽作者:瀬尾まいこ/ 原作:/ 80点
■非日常を日常的に描写
優しい音楽は瀬尾まいこによる短編3作を収蔵した短篇集である。瀬尾作品は「卵の緒」「優しい食卓」に続き3作目だが、本作は「卵の緒」と同じく、独特の登場人物がいい方向に働いている作品だと感じた。つまり好みってこと。
【優しい音楽】 特にモテる方でもない主人公のもとに一目惚れと思しきシチュエーションで女の子が声をかけてきた。何度も話をするうちに彼女と恋人として付き合うこととなるのだが、1つだけ腑に落ちない点があった。彼女が決して彼を家に連れ帰ろうとしなかったのだ。その理由とは...ということで物語は進む。 正直なところ、家に連れていってくれない理由なんて、始まって数ページでバレバレ。こんなのどこまで引っ張るつもりなんだろう...と思っていたら、その後の展開が予想外。どう考えてもバッドエンドしか予期できない流れだったので、非常に感心した。また、読み終わったあとに成程と膝を打つ様なタイトルが秀逸。
【タイムラグ】 不倫相手が奥さんと旅行する間、不倫相手の子供を預かるハメになるという、瀬尾まいこらしい、微妙なシチュエーションの話。ところがこの物語がなかなかにハートフルな方向に向かって好感。設定の組み合わせで成功した作品。タイトルもなかなか。
【がらくた効果】 何でも拾って帰ってくる彼女が、ある日ホームレスの佐々木さんを拾ってきた...という物語。正直なところ、アダルト作品か安いラブコメ漫画以外でこのシチュエーションを見るとは思っても見なかった。...にもかかわらず、ちゃんとした作品に仕立てあげてしまうのが凄いなと思う。ガラクタに意味を見つける行為には賛同。プラス思考の根源だと思う。
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