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トロン:レガシー

監督:ジョセフ・コシンスキー/ 原作:/ 68点

■あらゆる意味で続編

 

トロン:レガシーは1982年に公開された、世界初のCG映画、トロンの続編である。28年ぶりの映像化だが、作中でも丁度それぐらいの映画が流れ、本作の主人公は前作の主人公の息子という設定だ。

 

ネタバレにならない程度に前作の概要を設定しておくと、前作の主人公はトロン:レガシーでの父役であるケヴィン・フリン。彼はとある理由により、物質をプログラム化する機能を用いて、プログラムの世界に入り込む羽目になる。協力者であるアランの送り込んだ、アランの分身ともいえるプログラム「トロン」と共に、とある「敵」を打ち砕く為に戦ったのだった。

さて本作トロン:レガシーではケヴィンの息子、サム・フリンが主人公である。前作以降、エンコム社のCEOであった、父ケヴィンはサムがまだ小さい頃に失踪する。原因不明のまま時は流れて20年。未だに(!)ポケベルをずっと持っていたアランの元に、失踪したはずの父からのメッセージが届く。アランに依頼され、かつて父が経営していたゲームセンターを訪れたサムは、そこで謎のシステムを発見・起動し、プログラムの世界の中に取り込まれてしまう。

重要なのは、プログラムの世界に「入っている」という事。サマーウォーズのように外から操作してゲーム内で戦っているのではない点に注意して欲しい。技術的詳細について特に作品中で説明は無かったが、スタートレック等の作品で、エネルギー保存の法則を用い、物質をエネルギー化することでテレポートを実現している際の、エネルギーから物質への再構成情報のようなものを取り出して、ゲーム内で再構築しているのだと思われる。その場合にコピーではなく、実体ごと移動する必然性は理解しかねるが、おそらく実体ごとの移動とすることで、ゲーム内の体験をそのまま実体験とするなどなんらかの裏設定があるのだろう。

(ただし、全身をenergizeしてシステム内に取り込むと、全身を核分裂させたのと同じエネルギーが発生するか、同じエネルギー量となる別の物質が出来上がってしまうので、実際には構成情報と脳内情報しか転送していないのかもしれないが)

 

閑話休題。さてこの後のシーンはというと、まぁ、特に特筆すべき謎や、心躍るような面白展開が待っているわけではない。コンピューターの中、もっと正確に言えばレースアクションゲームや格闘ゲームの世界に人間が入ったら、的な世界を丁寧なCGで美しく描写している点は魅力であるものの、ストーリー的に見るものは乏しい。ただそれだけに小さな子供向けには良いのかもしれない。大きな子供には物足りないだろう。

期待していた3Dだが、3D blu-rayにより、家庭で立体映像が楽しめるようになった点は嬉しかったが、そこまで。意図的に外の世界を(オープニングの数シーンを除いて)2Dで、システム内に入ってからは3Dで描いている点の効果は認めるが、だったらもっとドラスティックに変化した方が面白かった。3D酔いを心配したのかもしれないが、余りにも地味で、字幕が一番浮き上がって見えた程度。それにシステム内の非現実世界はもう少し非現実的に描いても良かったのではないかと思う。そのあたりは、サマーウォーズのSNS内の描写などに比べると、保守的だなぁと感じた。

それから、そもそもCGでコンピュータ内を書いたものを立体化されてもあまり嬉しくないという、根本的な問題もある。AVATARの何が優れていたかというと、幻想的な地球外の惑星(のような)別世界に入り込んだ、その状況を3Dで擬似体験できた点であろう。一方、TRONの場合、背景は殆ど真っ黒。真っ黒な世界を立体で見せられたところで、せいぜい羊羹を間近に見ているような感動しかえられない。といっても、実際にはかっこいい見せ場も沢山あり、映像を頭ごなしにけなしているわけでない。ただ、AVATARよりそういう根本的な設定で損していると思うのだ。

そこまでしてあのカラーリングに固執したのは旧TRONリスペクトなのか、攻殻機動隊リスペクトなのか。冒頭のケヴィンのビルからのダイブは攻殻を意識しているとしか思えないが....。

 

以下ネタバレ

 

若干辛らつな意見を多く書いたが、別段悪い作品ではない。でも、特筆すべき点も無い感じ。良くも悪くも「映像は凄いけど脚本は」と評された前作TRONを引き継いでしまった感じ。見て損は無いけど、わざわざ3D版を探してまで見るほどの作品ではありません。通常のblu-rayでも充分。(僕は探し回りました...)