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ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲

監督:三池崇史/ 原作:/ 78点

■馬鹿馬鹿しいのに馬鹿馬鹿しくない

 

※前作に関する概要に触れますので注意。

 

山田玲司の原作漫画「ゼブラーマン」は、勝手にコスプレして戦う一般人という設定かつ、童貞男の苦悩のような内面描写が半分と言う、なかなかに難解な作品である。それをよくもここまでと言う大胆なキャスティングで描いたゼブラーマン実写化の第1作目はなかなかの佳作だった。「あの哀川翔がよくもここまでへっぽこな役を」と驚いたのも記憶に新しい。実際の所、以降の哀川翔はバラエティへの出演も増え、ゼブラーマン出演が躍進のきっかけとなったように思う。

 

2作目である本作は、1作目で世界を救ったヒーローとして有名になってしまった主人公、市川新市の日常描写から始まる。そのおどおどとした姿の描写は、「大日本人」を思い起こさせるようなオープニングだった。といってもその後のまとまりっぷりは段違いだが。

オープニングが終わると突然世界が変わる。彼は白髪となり、記憶を失った状態で道路に倒れていた。なんと彼は2025年の世界にタイムスリップしてしまった...かのような状況に追い込まれていたのである。

 

以下、ネタバレ

 

ネタバレ内に説明したような設定は、正直「ヒーローあるある」に登場しそうな、非常にありがちな設定である。その後の展開も、非常にありがちだ。だが、その脚本を映像化する際の、冗談と本気の配分が抜群に上手い。コントのような映像があったかと思うと、動きの早いアクションシーンでは、どんなヒーロー物より「見せ場」のわかったケレン味たっぷりの動きを見せ付けてくれるのだ。

あのヤクザみたいな見た目のせいで、三池監督に対する第一印象はあまり良くなかったのだが、いろんな作品を観ているうちに、「この監督は実は相当凄いのではないか」とようやく理解が追いついてきた。特に、ヤッターマンの実写化は驚くほど良い出来で、同時期の「ドラゴンボール」が不出来だった事も在り、「日本で実写化すると失敗する。ハリウッドに買われた方がマシ」という先入観は彼の手によってガラリと音を立てて崩れた。

本作品もその例に漏れず三池監督らしい「ここまでなら遊んでも作品が壊れない」という絶妙のバランス感覚により、かなり素晴らしい出来栄えとなっている。

ラストあたりはもう、想像通りの展開に尽きるのだが、最後の台詞があまりに馬鹿馬鹿しすぎて、逆に拍手を送ってしまった。筒井康隆の「笑うな」作中の「産気」を思い出すぐらい「落語」な終わり。その後はラピュタかと思ってしまった。

 

映画の出来も素晴らしかったが、仲里依紗の存在感も凄い。この人、毎度演じる役ごとに別人のように変わってしまう。現在放映中のCMでは爽やかな女子中学生のようだし、日本語学校の先生役のドラマの時にはかなりの馬鹿にしか見えなかった。アニメ時をかける少女では軽率な感じが良く出ていた。本作では生意気で世間知らずな娘っぽさが満点。ぽってりした体型も含め、ポスト深田恭子であり、かつ、彼女より万能型の女優だと思う。実写版「時をかける少女」を借りてきてみようかな....。