ヤッターマン監督:三池崇史/ 原作:/ 80点
■愛すべき馬鹿映画
「ヤッターマン」と言えば、老若男女おおよそ日本において知らない者は居ないだろうという、日本アニメ界の金字塔である。それを実写化しようと言うのだから、三池監督の勇気は賞賛に値する。なんせ日本のアニメ実写化は不作続き。中にはキューティー・ハニーのような良作もあるが、大抵が大失敗。デビルマンにいたってはその失敗っぷりの凄まじさに、寧ろカルト的な人気があるぐらいだ。
で、期待せずに居たのだが、どうやらこの作品、非常に出来が良いらしい。とはいえ、評判を鵜呑みにしてガッカリしたことは多いので、程ほどの期待で見たのだが、これがびっくりするぐらい面白かった。やるじゃん三池監督。この作品の良いところは監督の遠慮のなさだろう。原作を徹底的にリスペクトしている部分が多いにもかかわらず、同時に原作のイメージなんかぶち壊しても良いやという、思い切った演出もなされ、それが最高にキマっている。 当たり前のことであるが、アニメと実写は本質的に異なるものなので、そのまま移植したのではかならずどこかに違和感が生じる。実写化する以上は、実写にあったアレンジをしないと情報量が足りないのだ。三池監督はそのあたりの不足点を「自虐的突込み表現」にて上手く補完している。凄いお金をかけて凄い映像で凄く馬鹿なことをやっている。ある意味You tubeの自主作成映画的アプローチだ。
本作品の主人公は完全に深キョン演じるドロンジョ様。演技中の狙った甲高い声がまた、原作の声優にそっくりで、こんなドロンジョ様になら命令に従わざるをえまいという説得力抜群。プライベートでは美男子俳優を「ちぎっては投げ」しているという深田恭子の魅力爆発である。 それに対して本来ヒロイン役としてキャストされたはずの二人の、あまりにもあまりなへっぽこ扱いが酷くて最高。もし二人が、脚本を読んだ後で「美味しい」と思ってこの役を受けたのだとしたら、福田沙紀や岡本杏理の眼力は素晴らしい。ガンちゃん役の桜井だって完全な馬鹿役。明らかに一本足りない。いわゆるギークなので現実世界の女性のことが理解できてない、という描写だ。ここまでジャニーズを雑に扱ってくれると楽しくてしょうがない。
細かい演出面では、様々な場面に下ネタ的なギャグが入り、ボヤッキーとトンズラのからみも含め、どちらかというと大人がみて楽しい物に仕上がっている。子供が見ても本当の面白さは理解できないかもしれないが、まぁ、「全国の女子高生の皆さん」という台詞に代表されるように、もともとヤッターマンはそういう作品なので問題なし。分からないままにちょっと背伸びしてみるからこそ楽しいのだろう。
強いて言うなら安部サダヲの終盤の活躍は蛇足かな。あの人だけ「ヤッターマンの登場人物」では無いように見えてしまう。面白くはあるのだが、いきなり現実世界に引き戻されてしまい、メタな視点で作品を見る羽目になってしまった。ラストはあっさりで続編が見たかった。
そんなわけで、この稀有な実写化の傑作品。お勧めです。さまざまなサービスシーンを含め、見ておかないと損しまっせ。
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