トロイメライ作者:池上永一/ 原作:/ 69点
■地味だけどじわじわくる作品
トロイメライは琉球王国を舞台とした、ある意味時代劇である。主人公は江戸で言うところの岡っ引きで、彼が担当した様々な事件が、短篇の連作の形で収録されている。自分が最初に読んだ作品がたまたま「ぼくのキャノン」だったため、ちょっと牧歌的なカラーを持ったSF作家なのだとばかり思っていたのだが、どちらかと言うと琉球王国を専門とした、時代作家だったらしい。(2作しか読んでないから、本当のところはしらんけど)
自分が不勉強なだけだったら恐縮だが、恐らく多くの人にとって、琉球王国時代の社会構造というのは馴染みのないものだと思う。本作品は単なる捕物帳というよりは、事件を通じて当時の琉球王国の時代背景や社会構造を描くことに力を注いでいるように思う。 なので、最初の1、2作を読んでいるうちは「何だかミステリとかにしては何の驚きもないなぁ」と感じていたのだが、次第に世界観に引きこまれて、最終的には浅田次郎の「蒼穹の昴」を読んだ時のような、深い感銘を受けてしまった。って言っても、深さのレベルがだいぶ違うけど。(本作が浅いのではなく、蒼穹の昴が深すぎる)
短編のそれぞれを捕まえて評価すると、まぁ、好みの当たり外れも激しいんだけど、全体としてみた時には中々素敵な作品だと思います。ただ、個人的にはぼくのキャノンのほうがぶっ飛んでて面白かったかな。SF世代なので。 Copyright barista 2010 - All rights reserved. |