武士の家計簿監督:森田芳光/ 原作:磯田道史/ 78点
■几帳面に生きるということ
「武士の家計簿」は磯田道史によって書かれた『武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新』という作品を映像化したものである。長いタイトルを読めば分かる通り、実際に加賀の下級藩士であり、代々御算用者(ようは会計職)として使えた、猪山家の史実を元にした歴史作品である。 どうでもいいことだが、歴史物ってのは結末がバレてるので、ワクワク感が足りなかったりする。しかし本作の場合、あまりにマイナーな一族の話なので、ネタバレの心配がなく、安心して見ることができた。って、自分が歴史弱いだけで、本当は有名な人だったらすいません(→このサイトの読者の方々&猪山家の方々)。
この映画の主人公は、猪山直之という加賀藩の下級藩士である。彼は冒頭に述べたように、代々の御算用者の家系に生まれ、父譲りの几帳面さ、いや、父が「誰に似たのだ」というぐらいに、異常なまでの生真面目さを発揮する男として成長した。そんな男が、いかに幕末を生き抜いたのかを、息子である飯山成之の視点から描いた物語である。っと言っても構造上そうなだけで、成之が生まれるはるか前から物語は開始する。
以下、物語の展開に関するネタバレがあります。
脚本的な山は3つ。主人公の直之が真面目すぎるがゆえに起こしてしまう事件の話。猪山家の危機の話。そして、明治維新において幕府軍と対立する形で戦場に向かった、息子成之の顛末である。 これらはどれも、あまり抑揚を付けること無く、淡々と描かれる。この抑制っぷりが素晴らしい。よくある大河ドラマみたいに、見得を切るようなシーンはほとんど皆無。時代劇だからと肩肘張らずに、地に足のついたドラマ的演出を試みたのだろう。その辺り、同じく堺雅人が主演する「南極料理人」に似た匂いを感じた。
以下、物語の結末にかかわる重大なネタバレ
ネタバレ内に書いた通り、歴史作品としても、父と子のホームドラマとしても見所のある良作。大笑いも大泣きもないけれど、クスリと笑ったり、ほろりと涙をこぼしたりという、大人向けの作品です。
ちなみに、森田芳光監督と言えば、「(ハル)」とか「間宮兄弟」とか「家族ゲーム」の監督である。間宮兄弟、まだ観られてないから今度借りてくるかな。
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