実験的経験 experimental experience作者:森 博嗣/ 原作:/ 50点
■シャア専用の金色のモビルスーツ...じゃなくて、ファン専用の金色の書籍
※この点数は一般人向けです。ファンにはプライスレスです。
帯に「小説の枠を超えた小説」的な事が書いてある。多分この帯を読んだ一般人は「ドグラ・マグラ」のような尖った小説を想像するだろう。そして、ディープな森博嗣ファンは「水柿シリーズ」のような、なんとも胡散臭い匂いを感じるはずだ。 本を手に取る。最初のページを開けると、そこには、作者と編集者が自分たちについての描写を自分たちで評価する、メタな文章が待っている。「森博嗣もとうとう筒井康隆のような路線に走ったのか!」と早合点したファンの方々、ご安心下さい。ちゃんと貴方の直感は当たってます。
いろいろと実験的な遊びはあるのだが、基本的にはこれ、森博嗣の近況報告的なアレである。自分は連載者はあまり読まないのでちゃんと把握してないけど、どこかの雑誌に連載されたエッセイを、一冊にまとめた作品である。 「何だよまた小説以外を書いてるのか」と嘆くファンのかたも多いと思うが、まぁ、待って下さい。これ、ディープなファンが疑問に思っていることに対するダイレクトな答えが満載なのです。例えば、鉄道系サイトで書かれた引越しの話、結局どこに引っ越したのかなどの情報が、ちゃんと明かされている(明かしてないと言い張ってるけど)。もう書かないのかどうかについてもちゃんと説明してくれてある。一般に向けたエッセイという形はとっているれれど、明らかにいつものファンサービスの一貫にしか思えない作品なのだ。何だかんだ言って、やっぱり親切だなぁ。 物理的に自由の効く場所に移動したせいなのか、森氏の雰囲気もやや穏やかになった感じで、今後もお元気で作ったり書いたりしてほしいものである。
んなわけで、コアなファンのための小説っぽい何かである本作品。ファンじゃないのに手にとった貴方はご愁傷様。折角なので氏のファンになれるよう、黒猫の三角あたりから読み始めれば良いと思う。あえて、ヴォイド・シェイパやブラッド・スクーパあたりから読むのも面白いかもしれないなぁ。読んだ人は感想をよろしく。 Copyright barista 2010 - All rights reserved. |