Super 8監督:J・J・エイブラムス/ 原作:/ 82点
■多ジャンルの魅力を兼ねた良作品
Super 8が発表されたころのエイブラムス監督と言えば、直前の作品クローバー・フィールドで一躍有名になったばかりであり、当然のように「あの手の」映画が期待されるところであった。そして、流れるSuper 8のトレーラームービーもそれを期待させるに相応しい映像であった。しかし、この予想は良い意味で裏切られた。
以下、映画全体の大きな流れやその目指したものについて説明。前知識なしで見たい人は注意。
Super 8は映画好きによる映画好きのための映画作品である。Super 8ってのは昔の8mmビデオの良さを継承した、家庭用動画カメラの1機種をさす。この機種は非常に人気があったようで、現在映画監督をやっている世代には、このSuper 8を片手に映像作品を自主制作していた者も多いのだという。
物語の部隊は1979年のオハイオ州。主人公のジョーを含む少年たちは、上記の例に漏れず映画の自主制作に嵌っており、Super 8片手にゾンビ映画を撮影していた。ある日、彼らの中の監督役が、映画に恋愛要素を入れたほうが盛り上がるからとアリス(エル・ファニング)を主演女優にスカウトした。 脚本を書き換え、彼女との駅での会話のシーンを撮影するのだが、当然セットを作るお金なんかは無い。なので、夜中に駅に忍び込んで撮影することとなった。準備をしていると、遠くから列車が近づいてくるのが見えたので、これはいい映像が取れるぞ!とみんなは意気込むのだが、彼らが撮影を敢行する後ろで、列車は大事故を起こし、辺りは火の海と化してしまう。
この辺りの展開を見て、エイブラムス監督作品慣れしている観客は「お、これはビデオにxxが写って、クローバー・フィールドみたいな展開になるぞ!」と想像する事になるわけだが、実際にはそんな展開にはならない。SF要素やパニック映画要素は充分に内包しているが、それが主題となる作品にはならないのだ。
以下、映画の重要な展開についてのネタバレ。まだ見てない人はクリック禁止。
この映画は映画好きであるエイブラムス監督が、よき時代の王道スタイルの映画の形で過去のさまざまな名作へのリスペクトを盛り込んだという、いわばファンムービーなのである。一般視聴者は懐かしい映画の匂いにキュンとするだろう。そして映画監督を志したことのある視聴者なら、ハートを根こそぎ鷲掴みにされるはずだ。
したがってこの映画を見て「結末がご都合主義」だとか「戦いに爽快感が無い」だとか「映画のトレーラーの割りに地味」だとか、そういう不満を持つのはお門違いである。逆にいうとそういうのを期待して見るときっと物足りないと思うのでご注意。 逆にスピルバーグの古い作品が好きな映画ファンにはかなりお勧め。新しいのに懐かしい映画です。
個人的にはエル・ファニングの名演技が見られただけで既に元が取れたと思う。等身大の少女と、演技中の女優としての演技の2つを使い分ける見事に一気にファンになってしまった。
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