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V.T.R

作者:辻村深月/ 原作:/ 63点
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価格:819円(税込、送料別)

■独特の雰囲気は好みではあるものの...

 

V.T.Rは辻村深月の小説「スロウハイツの神様」に登場した作中作をノベライズしたSF作品である。詳細は上記リンク先を読んでもらえばわかるが、「スロウハイツの神様」は作家たちの共同生活を描いた作品で、「V.T.R」はそのメンバの中でも特に成功を収めていた作家、チヨダ・コーキの作品の一つである。

スロウハイツ中のチヨダコーキはかなり浮世離れした個性的な作家なので、それにあわせ、本作品はいかにもチヨダコーキっぽいテイストで描き上げられている。別の作家のテイストを真似て文章を書くって遊びはこのサイトでもやってみた事があるが、それを一冊まるごとという規模でやり遂げてしまうのだから、本職は違うなと思う。バクマンの作画担当の小畑健のようだ。

 

V.T.Rはカウボーイビバップとかスペースコブラのような世界観を持つ作品だ。ニヒルな男、渋いバーテンダー、拳銃、麻薬、男の心を掴んで離さない強気の女などが物語を構成する要素である。設定上で違うのは宇宙という要素が抜けているぐらい。

ただし、主人公設定は大きく違う。ちっともハードボイルドではないのだ。通常この手の作品の主人公は、自分の本心を余り語らない。心は行動で示すものだというようなスタンスで、ヘラヘラしながら格好良いことを実現するのが普通である。

ところが本作品の主人公は非常に半熟な感じ。愚痴は多いしナヨナヨしてるし、自分の行動の情けなさを語り部として読者に謝ったりする。この設定はちょっと新鮮。いや、昨今のアニメにはいそうなキャラクタだけど、王道は外している、ぐらいか。

 

以下、物語の方向性についてまあまあネタバレ。ネタバレ嫌いの方は注意。

 

そんなわけで、雰囲気読みの人にはお薦めだが、ストーリー読みの人にはあまりお勧めしません。アニメにしたら面白かもだけど、それにしてももう一つ何か答えが欲しかったなぁ。

 


おまけ。ネタバレするので注意。