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猫舌男爵

作者:皆川博子/ 原作:/ 53点
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■脳内許容範囲を超える作品

 

猫舌男爵は皆川博子によるとても不思議な物語を集めた短篇集である。この人の作品を読むのは初めてなので、普段もこういう作風なのかどうかはわからないが、なかなか読者に理解のためのエネルギーを要求する作品である。それだけにピタリとはまれば気持ち良いが、はまらない人にはちっとも面白くない、両極端な評価になるのではないかと思われる。なので、短編の一つが合わなくても、投げ出さずに順に読んでみて欲しい。

 

【水葬楽】

死の概念が今の地球とは大きく乖離した世界の話。人は亡くなるのではなく、水槽に入るのだという。ゴチックな雰囲気の不思議な作品でスチームパンクやホラーの香りがプンプン。

 

【猫舌男爵】

タイトルを見てもピンと来ないと思うが、本作品は「タイトルを見てピンと来なかった話」である。物語は様々な人間の手紙や手記の形で構成され、主たる登場人物は日本語を学び始めたばかりの男である。彼は日本語の作品を彼の母国語へと翻訳してみるのだが、彼の中途半端な語学力が様々な問題を引き起こす。

筒井康隆的スラップスティックのような、バベルっぽい訓戒を含むような、なんとも言えない作品。

 

【オムレツ少年の儀式】

おそらく中世ヨーロッパが舞台の物語。主人公の少年は貧しい家の出身であるが、運良くオムレツを焼く係という、恵まれた職を手に入れる事となる。

 

【睡蓮】

気が狂った女画家の生涯を彼女の手記、および彼女の家族等々の手紙などを遡りながら、明らかにしていく物語。これは正直最初の部分を読んだ時点で、結末まで見えちゃうかも。

 

【太陽馬】

豚の生殖部に豚の腸を原材料として作った弦を縫いつけたら、彼らが進化して....という、ゴチックホラー的作品。超気持ち悪いのだが何だか引きこまれてしまう。「幻想の世界」を思い出してしまった。戦争の話が登場するにつけて、とうとう僕の理解力を超えてしまった。文字の意味はわかるのに文章の意味が分からないという作り。悪夢を見せつけられているようだ。

 

ってなわけで、珍しいものが好きな人は一度御試しあれ。面白かったけど、おすすめ度としての評価点は低めに設定しておきます。