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幻想の未来

作者:筒井康隆/ 原作:/ 95点
幻想の未来

幻想の未来

価格:441円(税込、送料別)

久しぶりに再読した、昭和46年初版の古い作品。中編である幻想の未来と短編8作品を収めた、珠玉の短編集だ。様々な作家の作品を読み、どれだけ素晴らしい話を読んでも、筒井氏のこういう鮮烈な作品とは衝撃度が違うように思う。幻想の未来一作だけで既に100点といいたいところだが、余りに難解なので少し控えておいた。本好きなら死ぬまでに一度は読むべき。

 

【幻想の未来】

人類が最終戦争を起こした後の世界を描いた作品。と聞いて「あぁ、その手の作品か」と想像した100人中100人全員が想像を裏切られることになる。切り口がどうとかそういう次元ではなく、根本的に発想が違いすぎる。

本作品は、読者にかなりの理解力と忍耐力を要求する。しかし、読み終わった際に、長い長い映画を見終わった後のような、開放感を得るだろう。読んでいる最中は異世界の異常なリアリズムに脳がトリップしたような状態となってしまう。

以下、内容には触れないけれど、方向性のネタバレ

 

【ふたりのインド人】

ナンセンスホラー系。再読には耐えない作品だが、好きなジャンル。このころはインド人といえば得体が知れないという時代だったのだなぁ。

 

【アフリカの血】

わはは、で終わる作品。いま出版したら大問題になるんだろうなぁ。とはいえ氏は「癲癇問題による断筆事件」以降、出版社と「何を書いてもいい」契約をしているはずなので、気にしないだろうけど。

 

【姉弟】

僅か数ページの不条理物。内容に少しでも触れるとネタバレになるので何も書きようがないな。

 

【ラッパを吹く弟】

おかしな状況が当たり前のまま突き進む、こういうカラーが大好き。本文からこのタイトルへ同繋がるかという楽しみ方ができる。

 

【衛星一号】

わはは。ってかなんで東北弁?

 

【ミスター・サンドマン】

スパイダーマンにいたな、こいつ。見方を変えれば童話のようでもある。

 

【時の女神】

タイムパラドクスにさらにプラスアルファした名作。昭和46年にしてこの新しさ。こういう作品を読んでない人は時間旅行物なんて語っちゃいかんと思う。

 

【模倣空間】

シリアスSFのようでいてナンセンスな締めが氏らしい。脚本筒井康隆の銀河鉄道999映画を作ったら世界的名作になると思う。

 

【白き異邦人】

切ない物語。人は何故こんなに生まれ故郷にこだわるのだろうか。