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凍りのくじら

作者:辻村深月/ 原作:/ 90点
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■全く君ってやつは本当に

 

凍りのくじらは辻村深月によるドラえもん小説である。といっても、京極夏彦の「南極」みたいなパロディ小説ではない。

 

主人公の少女はとある写真家の娘だ。彼女はとても頭のよい少女なのだが、世の中にかなり冷めていて、誰とでも話が出来る代わりに、誰にも心をひらいていない。友達とコンパに行っても適当に話を合わせるだけ。元彼が会いに来ても、冷静な目で彼の欠点を眺めつつ、適当に相槌をうち、なんとなく一緒に過ごしてしまう。彼女には病気で入院する母がいて、頻繁に病院に通うことになるのだが、その母との距離感も測りかねている。

そんな彼女の前に、ある日「彼女の写真が取りたい」とお願いする少年、あきらが現れる。その日から物語は少しずつ色を変えていくのだ。

 

物語中の彼女は失踪した父の影響でドラえもんの大ファンである。藤子不二雄F氏が「SFはScience Fictionの略じゃなくて、すこし不思議の略なんだ」と語った事から、彼女は身の回りの人を「すこしxx」と分類する習慣があった。そして、身の回りの人間の特徴を「ドラえもんの道具の○○を持っているかのようだ」などと表現する。この設定こそが、冒頭に「ドラえもん小説」と説明した所以である。

 

さて、この物語の魅力の一つはと言うと、そのドラえもんトーク自身である。カワイソメダル、独裁スイッチ、お座敷釣りぼり、どこでもドア。数えてはいないが、かなりの数のドラえもんの道具が物語中の会話に登場する。そしてそれは薀蓄話としてではなく、ドラえもんの物語から子供が何を学び取ってきたのか、そういうドラえもんに対する愛情たっぷりの視点で描かれる。ドラえもんファンはもちろんの事、いままであまり原作を読んでいなかった人も、思わず古本屋に駆け込むこと請け合いだ。

しかしこの物語の本当の魅力はそこにはない。

以下ややネタバレ

 

辻村深月の作品にしてはやや重たい作品ではあるものの、読後は非常にすっきりする作品。万人におすすめです。

 

※1:

ちなみに、「フエルミラー」について、僕は作中のお父さんと全く同じ感想だった。2回うつせば良い。

 

※2:

どの道具が欲しいかと聞かれると、みんな「もしもボックス」が欲しいというが、僕ならそれは選ばない。何故ならあれはよくできたバーチャル・リアリティ装置に過ぎないからだ。僕のお薦めは「嘘800(エイトオーオー)」。飲んで言ったことが必ず嘘になるという薬だ。

のび太がジャイアンを自力で倒す「さようならドラえもん」は非常に有名だが、実はこの薬、そのあとドラえもんが戻ってくる理由となった、影の実力者である。のび太はドラえもんの残したこの薬を飲み、効果が切れて無いのに気づかずに「どうせドラえもんは二度と帰ってこないんだ!!」と叫んだ。そのことによってドラえもんは戻ってきたのだ。その後ののび太のセリフが秀逸で、ちゃんと「うれしくない。これからまた、ずうっとドラえもんと一緒にくらさない」と叫んだのだ。やっぱ頭いいな、のび太。

道具の使い方は簡単。薬を飲んで「ここにどこでもドアはない」とか「ここに一億円置いてない」とかつぶやけば良い。まさに全知全能の神。ちなみに四次元ポケットと答える人も多いが、それもうまくない。あれは巨大な収納袋に過ぎず、中の道具は別途購入しているのだ。僕がアラジンのランプの精なら、空っぽの四次元ポケットを渡して消えるだろう。まぁ、逆にもらったのが僕なら、物流倉庫でも作るか、放射性廃棄物の処理施設でも建てて儲けるけど。

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