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阪急電車

作者:有川 浩/ 原作:/ 87点
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価格:1,470円(税込、送料別)

■ライトで爽やかな連作、整いました

 

「阪急電車」は、とある阪急電車のローカル線を舞台とした、連作小説である。それぞれの章は雑誌に短編として連載されていたものであり、全てを集めて本作品1冊分が成り立っている。ショートショートが好きなので、短い単位で一応の結末にたどり着く点は嬉しいし、さらに全体を読むとまた違った側面が見えてくるのだから、非常にオトクな気分。

 

本作品の各章のタイトルは全て駅名となっており、前半戦が行き、後半戦が折り返して帰りの行程となっている。各章の主人公たちは皆無関係な人たちなのだが、それぞれが同じ車両内という空間を共有することにより、ゆるくつながり合っている。例えばある章の主人公がひと通りの物語を終えて電車を降りると、次の章の主人公は彼女が降りるのを眺めている、といった具合だ。

それぞれの物語は甘ったるい恋愛や、ドロドロとした人間関係、祖母と孫の話など千差万別。しかし、どれも主役の行動や考え方に好感の持てるものが多く、いつもの有川浩のような、「読んでいるだけで恥ずかしい」べったべったの甘さは比較的抑えられている。これぐらいの濃度で「図書館戦争」シリーズを書いたら、もっと幅広い世代に...とも思ったが、あのカラーだったからこそアニメ化やコミック化がなされたわけなので、まあ、あれで良いのか。

 

で、それらの物語の主人公たちが、力を合わせて紡ぐ最終章が絶品。有りがちな展開と言われればそうなのかもしれないが、とにかく読んでいて爽快なのだ。とある「悪」に対し、みんなが力を合わせて対抗する姿が非常に心地よい。電車通勤or通学を長く続けた人なら、みんな同じ快感を味わうことができると思う。

 

ところでこの作品、とある人に「阪急電車で小説を書いてみたら?」と言われた有川浩が、それじゃぁと書き上げたものだという。この人、なにかテーマを与えられた時の、その題材の生かし方が凄いな。なんとなく小説界のねずっちというイメージ。今回の作品も綺麗に「整いました!」