オテルモル作者:栗田有起/ 原作:/ 89点
■言葉に言い表しがたい面白さ
栗田有起の作品は「蟋蟀」に続き二作目。前作「蟋蟀」はアイデアあふれる短篇集で、「うわ、めちゃくちゃ好きかも。でもこういうタイプの作家って長編になったときどうなっちゃうんだろう」と思っていたのだが....ビックリ。良い方に予想を裏切られた。これほど奇抜な作風であるにもかかわらず、世界観を崩壊させることなく見事な作品に仕上がっていた。 この人の作品の素敵なところは、何だか夢の世界に迷い込んだような、自然さをキープしたままの違和感にある。明らかにおかしな世界なのだけれど、ギリギリのところで日常を描いた作品であるかのように物語は流れ、読者に世界について深く考える隙を与えない。ちょっとずつ変貌しながら不連続にシーンが移り変わる夢のような感覚なのだ。
上記のような作風である以上、本作品の魅力を書評で表現する事はなかなか難しい。なので何も書かない。ってわけにも行かないので、ほんのちょっとだけ、物語のさわりの部分を説明してみようと思う。
以下、物語の結末には関係ないものの、世界ストーリーの冒頭を説明します。ネタバレに厳しい人は注意。
ネタバレ内のような幕開けの数ページで、自分は心をギュッと掴まれた。自分には絶対思いつけないシチュエーションを見せつけられただけで、魅せられてしまったのだ。一方この幕開けに何の興味も持てない人は彼女の作品とは肌が合わないかもしれない。読者を選ぶ作品なのだろうが、個人的には大好物。「蟋蟀」が面白かった人は是非本作品も。お薦めです。
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