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ロング・ウェイ

作者:小手鞠るい/ 原作:/ 76点
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価格:1,470円(税込、送料別)

■長く曲がりくねった道のり...なのか?

 

「ロング・ウェイ」は小手鞠るいによる文学作品である。物語の根幹は様々な登場人物の恋愛によって構築されるのだが、いわゆる恋愛小説には属さない。主人公は冒頭に小さな娘として登場する、美亜である。彼女もそうだが、登場人物たちはみな、一癖も二癖もあるタイプで、ちょっとした事で何だか「面倒な恋愛」に足を踏み入れてしまう。

 

この手の物語を読まされると、真っ直ぐなキャラクタのほうが好みな自分としてはイライラさせられることも多いのだが、本作品の場合そうはならなかった。それは作中で流れる時間の速さによる。本作品の場合、章が変わるごとに驚くほどの速度で時が進み、悩みや問題には結果が示され、そして次の問題が提示される。元々それぞれの章が短編として連載されていたからということもあるのだろうが、この展開の速さのおかげで気持ちよく読むことができた。

 

以下、タイトルおよび物語の大きな流れに関するネタバレ

 

とまぁ、ネタバレ内に書いたように、たかだかタイトルの解釈だけで、えらく悩む羽目になってしまった。物語自体は暗すぎず明るすぎず。気軽に読めるので安心。一番大切なのは「大嫌いな奴」が登場しないこと。最近感情移入がすぎるので、大嫌いな奴は少なめな方が良い。大人になら誰でもお薦めだが、子どもには面白さがさっぱりわからないだろうなぁと思う。多分高校時代に読んでもちっとも心に響かなかったと思う。つまり子供だったのだ。

 

ところで、彼女の作品は「猫の形をした幸福」についで2作目だが、なんとなく彼女のカラーがわかってきた。男性は奔放だが悲しみを処理するのが遅く、女性は一途だが極端で、喉元をすぎればやや楽観的。舞台設定も少し近い。なかなか面白かったけど、全く別ジャンルの作品を書いた場合にどんな物語を紡ぐのかにもちょっと興味がある。次はどれを読むかなぁ。

 

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どうでも良いことだが、昨日の辻村深月「本日は大安なり」に引き続き、本作でも双子の姉妹が登場して驚いた。なんだか最近こういう偶然が多いなぁ。