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アウトレイジ

監督:北野 武/ 原作:/ 69点
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価格:3,591円(税込、送料別)

■面白いけどお薦めするかどうかは悩む

 

アウトレイジは北野監督による、痛快暴力映画である。北野監督といえば古くから暴力的な描写のイメージが強いが、これまでの北野映画における暴力は、何らかの美しさを表現するための、手段としての暴力であったように見えた。一方本作品の暴力は、暴力のための暴力である。暴力自体をエンターティメントとして楽しもうというコンセプトの作品だ。

元々芸術的センスは抜群で最初から完成されていた映画監督であった北野監督だが、興行成績的にずば抜けていたかというと、そうでもなかった。映画好き以外にはあまりにも難しかったり衝撃的だったりする作品が多かった。ところが座頭市での北野監督は違った。あれは明らかにエンターティメントに徹した作品であり、またそれがちゃんと興行成績に結びついた作品でもある。本作品もその流れにのった、ちゃんと客を意識した作品になっている。

 

本作品の主人公は...よくわからない。監督であり大活躍する北野武は明らかに主役に見える。しかし、彼を中心に物語が回るかというと、どうもそうとも言い切れない。とにかくヤクザがヤクザを裏切って、ヤクザ同士で殺し合い、殆どの連中が何らかの形で死を迎えるという、筒井康隆のスラップスティック作品的な展開を見せる。

これまでの監督の作品とは異なり、彼らの殺しに信念はない。ただひたすらにお金と地位のために互いに殺し合う。誰が誰を裏切るか、誰が誰をどうやって殺すか、そういうゲーム的な感覚で見るようできている映画である。何かに似てるなと思ったら、ハリウッドのホラー映画が一番近い。

 

したがって、映像はこの手の映画としてはピカイチに素晴らしいのだが、見終わっても心に残るものは何にも無い。特に大きく思い出に残るようなシーンもない。ただ「あ、終わった」と思うのみである。この「開放」をエンタに徹したと評価するか、薄っぺらいと非難するかでこの映画の評価は大きく割れるだろう。自分は「まずまず」と思った。ただ、絶賛するほどではないなとも思った。

とはいえ、ビデオの最後には「アウトレイジ2」の予告が流れたことだし、どうやら狙い通り興行的には成功したものだと見える。主要メンバが全滅してしまったので2は続編ではなく、仕切りなおしで同じコンセプトの作品になるのであろうと思われるが、果たして本作品を超え、新しいジャンルとして確立することができるだろうか。ちょっと楽しみである。