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木洩れ日に泳ぐ魚

作者:恩田 陸/ 原作:/ 39点
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■だから何?

 

「木洩れ日に泳ぐ魚」は恩田陸による長編小説。恩田陸の作品を読むのはこれが2冊目。前回読んだのは「図書館の海」という短編集で、「アイデアは面白いが、文書が頭に入ってこず、読みづらい」という印象を受けた。しかし氏は短編作家では無かったようなので、気を取り直しての2冊目...だったのだが....うーん、ちょっとしんどかった。

 

主人公2人は明日部屋を引き払う、これから別れようとしているカップルである。二人は荷物を整理し終わった部屋にテンヤ物を持ち寄り、最後の晩餐を始めた。ところが二人が考えていたのは、別れを惜しんだりというセンチメンタルなものではなく、[「ある謎」をいかに明らかにするかという事であった。

 

以下、ややネタバレ気味なので注意。

冒頭の設定はなかなか面白くて、ここからどのように恐い話にもって行くのかと期待していたのだが、物語はなかなか展開しない。二人はお互いを探りあうような会話を続けるだけ。そう、会話が続くだけなのだ。本作品に情景描写などは殆どない。部屋の中で二人が語り合うという設定である以上、仕方が無い部分もあるが、それにしたって極端である。殆どが「」でくくられた会話か、そのとき地の文の視点となっている語り部の心中を説明する文章だけで構成されるのである。

『そのとき〜』とわざわざ註釈をつけたのには理由があって、物語は殆ど章ごとに視点が変わる。女の視点、男の視点と交互に繰り返される。お互いの台詞に特徴もなければ情景描写も少ないため、章ごとに「これはどっちの視点だ?」と確認しながら読まなければならない上に、最後まで読んでも特に視点の切り替えにより実現される、明確な利点を見つけることは出来なかった。

 

文章は読みにくいものの提示された謎の行く末は...と期待していたのだが、これまた尻すぼみ。結局、ホームズもビックリの「妄想ロッキングチェア・ディテクティブ」っぷりを発揮した推理により、「うっかり忘れてた」という結末を導くだけ。ここまで仮説の上に仮説を積み重ねてどうするんだ?結末は明らかにミステリ方向に舵が切られているが、恩田氏は彼の文体の特徴を生かして「ホラー」方面に舵を切るべきなのだろうと思う。そのあたりは前回のレビューで感じたそのままだなと思った。結局の所、「短いからわかりにくいと思ったら、長くなっても論理性が足りない」というちょっと残念な結果に。好きな人は良いのだろうけど、僕の好みではありません。

 

あと、一般的にはどうでも良い事なんだろうけど、生きる意味とか、昆虫が火に飛び込む理由だとか、その辺りの会話が馬鹿すぎてイライラ。いや、登場人物の知性と作家の知性は別物だから別に構わないんだけど、2人しか登場しない作品で2人とも馬鹿では、ちょっと読んでいて萎える。

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