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図書室の海

作者:恩田 陸/ 原作:/ 69点
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■詩的省略の美

 

恩田陸の短編集。実は恩田陸を読むのは初めてなのだが、そもそもこの人は短編作家じゃないっぽいので、しまったなぁという感じ。印象としては1行1行が美しく、行間はバッサリ切ってしまう感じ。なので、はまった作品は詩的で美しく物凄く好きなのだが、ちょっとはまり切れないままだった作品は、なんだかシンクロできない感じ。ただ、凄くいいなと思った作品があったので、読んで良かったなと思う。今度は長編を読んでみたいところ。

 

【春よ、こい】

桜の花にまつわる短い物語が、夢のように積み重なってできた物語。非常に美しいのだが、それぞれの階層がぶつ切りの為、SFファンタジーというよりはホラー的に感じてしまった。いや、こんな美しいホラーなら夢十夜みたいで良いのだけれど。

この作品は、「異形コレクション・時間怪談」に収録されていたのだという。一時期「異形コレクション」は収集していたので、ひょっとしたら既読なのかもしれないが....。取りあえず「異形」は確かホラー集だったと記憶しているので、ホラーっぽいという自分の感覚は間違っていなかったという事か。

 

【茶色の小壜】

友人の交通事故の現場に居合わせていた主人公は...という、「時かけ」のような、そうでないような、これまたホラーとSFのあいのこのような作品。ただ、筒井康隆を読みなれた目から見ると、これはホラーだろうなと思う。収録されている短編集の名前は「血の12幻想」らしいし。

 

【イサオ・オサリヴァンを捜して】

ある戦場にいた不思議な男の話。この物語、9割ぐらいまでが物凄く好き。というのも、個人的にイサオ・オサリヴァンの描写がとても好きで、終わりがけにSFになっちゃってちょっとがっかりしてしまったからだ。SFじゃない戦場の物語でも良かったのに。実はこれ、SF長編の予告的な短編なのだとか。SF部分がどうなるのか興味はあれど、綺麗なイサオ・オサリヴァンのイメージを崩したくないような気もする。

 

【睡蓮】

「麦の海に沈む果実」という作品の「理瀬」の幼年時代の話らしいのだが印象薄いなぁ。

 

【ある映画の記憶】

ある映画の記憶をたどって、とんでもない結末にたどり着いてしまうお話。ミステリ仕立てだけど、どっちかというと怖いよね。自分が知らないだけで恩田陸ってホラー作家なのかな??

 

【ピクニックの準備】

これも長編の予告編らしい。ウーン、有名作家になるとそういう売り方ができるのか。

 

【国境の南】

とある喫茶店のお話。甘酸っぱい恋愛話でも始まるのかと思いきや、常連客がどんどん死んで行くという....。ミステリっぽいんだけど、締め方が完全にホラー。個人的にはこの人はホラー作家で決定。

 

【オデュッセイア】

とおもったら、これファンタジーだよね。歩く土地の話なんだけど、こういうの物凄く好き。なんかね、言葉を持たないものが身勝手な人間のために一生懸命になっているという、その姿勢だけで泣きそうになるんだな。本短編集の中では一番好きかも。

 

【図書室の海】

ノスタルジックな青春物語のように見えたのだけれど、大矢さんとこの書評で確認したら、怖い話の番外編なのだそうな。ウーン、本編を読まないほうが美しい記憶のままでいられそうでその。

ただ一つ言えるのは、純愛や憧れとストーカーは紙一重だから、視点を変えればホラーになりうるんだろうなぁ。

 

【ノスタルジア】

うーん、新ジャンルの100物語?企画が面白いのは解るのに、なんだかうまくのめりこめなかった。読んだ時の気分の問題かなぁ。ファンの方々、ごめん。