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パスタマシーンの幽霊

作者:川上弘美/ 原作:/ 77点
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■短編集である事を意識する必要あり

 

「パスタマシーンの幽霊」は雑誌クウネルに連載されていた短編22作+1を収録した、短編集である(毎度の事ながら、レビュー者泣かせだ)。小説誌以外の雑誌への連載ということで、その多くは完全に独立した作品となっている。1冊でこれだけ多数の短編が読めのは嬉しいが、作風にそれほどバリエーションがあるわけではないため、まとめ読みするとやや食傷気味。それぞれの作品の記憶が脳内でごちゃごちゃに交じり合ってしまう。収録を10作ずつぐらいにして分けて、もっと薄い本にしたほうが良かったんじゃないかなあ。とりあえず、毎日寝る前に1作、なんていう読み方が楽しいかも。

 

以下、ネタバレ少な目での解説を行うが、なにぶん短編集なので、未読の人はやめておいたほうが良いかも。

 

【海石】

「いくり」と読む。連載の最初にこのようなホラー仕立ての物語を採用したのはなかなかの英断。個人的にこの独特の恐さと美しさは好み。

 

【染谷さん】

拾った石を売りつけるインチキ宗教女の話。インチキと慰めは近い所にあるのだな。

 

【銀の指輪】

指輪を自作する女とアパレル女の話。読んでいるときに創造した指輪の映像は強く脳に記憶されているが、物語の印象は薄い。

 

【すき・きらい・らーめん】

父が再婚するという、とても大人びた姪っ子の話。タイトルの意味がわかった瞬間が快感。

 

【パスタマシーンの幽霊】

彼氏の家で見つけたパスタマシーンとその持ち主である幽霊の話。淡々と意外な方向に進む物語は、舞城王太郎的で好み。タイトルになっているだけの事はある。

 

【ほねとたね】

数学で金メダルをとった少年との話。これもなかなか好きな作品。サマー・ウォーズの主人公なんかもそうだったが、こういう歪な天才が好きなのだ。

 

【ナツツバキ】

小さな男、山口さんの話。こういうのを馬鹿馬鹿しく無いように書けるのは素敵だと思う。

 

【銀の万年筆】

モテ期のお話。物語としてはよく出来てるけど共感は出来ないな。自分にもモテ期はあったけど、そんな対応はしなかった。

 

【ピラルクの靴べら】

幼い頃に親を事故で亡くした女友達の話。結構お気に入りの作品。

 

【修三ちゃんの黒豆】

おかまちゃんの友人のアドバイスを受ける女の話。

 

【きんたま】

才能と努力の話。別に美談なら名作と言うわけではないのだろうけれど、こう言う「想い」の伝わる話は好み。

 

【お別れだね、しっぽ】

半ばSFのような、ホラーのような。やや薄気味の悪い導入のわりには爽やかな終わり。

 

【庭のくちぶえ】

山口さん、再び。頑張れ。

 

【富士山】

タイトルから想像のつかない内容。締めはホラー的でちょっと恐い。

 

【輪ゴム】

家庭のルールってなかなか曲者だよね。

 

【かぶ】

思いを隠す姿が中学生的で、ほほえましい。カブを気遣う姿が良い。

 

【道明寺ふたつ】

おかまちゃん改めゲイ再び。ちょっとは成長したようでなにより。

 

【やっとこ】

おじさんはいい味だけど、主役の女がどうにも好きになれない。

 

【ゴーヤの育て方】

なんか原田さんがかわいそうだよね。主人公が嫌なやつ過ぎる。

 

【少し曇った朝】

おむすびだけでこんなに家庭の構造が語れるんだなと感心。

 

【ブイヤベースとブーリード】

わかりやすいけど好み。結局ハッピーエンディングが好きなのか?俺は。老いたなぁ。

 

【てっせん、クレマチス】

うーん、正直最後の1作が一番印象が薄かった。