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カーニバル 人類最後の事件

作者:清涼院流水/ 原作:/ 20点

■我々はこれを完成品とは認めな〜い!

 

上記のコメントを読んで「ういろう」とか「ラーメンズ」とか思い浮かんだ人は友達です。清涼院流水といえば、随分と有名な新本格ミステリ作家である。西尾維新作の「ダブルダウン勘繰郎」が、氏のJDC設定を借りている事などから、以前から気になっていた作家であった。以前にも何かを読んだ気がするが、あまりいい印象が無かった。

今回、一念発起してもう一度手を出してみたものだが、結論から言わせて貰えば、自分には合わない。多分二度と読まないだろうとおもう。ただし、このスタイルに需要があるのは認める。好みはそれぞれなので、好きな作家をけなされるとイライラするという人は、ここで帰っていただきたい。

 

 

カーニバルはJDCという、日本の名探偵が集まる組織を舞台としたミステリ小説の一つだ。事件はJDC本部の爆破事件から始まる。犯人は自ら「ビリオンキラー」を名乗る者であり、歴史的遺跡を丸ごと破壊するなど、とんでもない規模の不可能犯罪を連続で実現する。また、「犯罪オリンピック宣言」なるものを発令し、世界の優秀な犯罪者を召し上げる制度まで作ったという。で、冒頭の爆破事件を生き残った探偵たちがどうこの事件を解決するか、という2段組800ページにも及ぶ、超大作である。

 

まず、最初のハードルは、登場人物の描写。作者自ら「○○は天才探偵だ」と形容するという、とんでもない描写による、天才探偵の数々は、全てアニメキャラとしか思えないような、極端なファッションと極端なあだ名と極端な性格をもっている。この時点で読者の1/3ぐらいは逃げ出すと思うのだが、その探偵たちの推理方法が、「あてずっぽう」「徹底したデータ分析」「予言」「歩く」などわけのわからないもの1つだけに頼っているというふざけた仕様なので、まともにミステリを読もうと思っていた人は、全員駆け足で逃げ出す事になる。

おまけに、物語中に彼らがまともな推理をしたり謎を解いたりするシーンは殆ど皆無であり、各探偵のプロフィールがひたすら紹介し続ける。読者は一体何人登場するかわからない登場人物たちの名前やあだ名や二つ名や生い立ちをひたすらに詰め込まれる羽目になる。事件の舞台となる遺跡の薀蓄が長々と語られる事もあって、この時点での評価は「京極夏彦が面白くなくなった感じ」と言うものだった。

 

ただし、それでも頑張って読み進めたのは、その大きな「仕掛け」に期待したからだ。物語は時系列には記されず、1週間ごとに分割された章がランダム(っぽく)並べ替えられている。冒頭には「時系列順に読んでもよいが、掲載順に読んだ方が楽しめる」などあおり文句が書いてあるものだから、上記の部分でウンザリしているにもかかわらず、「トリックを逃してなるものか」と必死で読まされてしまったのだ。

 

だがしかし、この努力は完全に無駄に終わった。なんとこの物語、最終章まで読んでも、なにも納得のいく解説がないのだ。いや、一つだけ謎はとけるが、そんなのは途中でバレバレだし、とけても何も嬉しくない謎である。というか、読み終わって巻末のリストを見たら、この作品は連作の6個目かなんかになってるじゃねぇか。だったら、xxxxシリーズ第6話「カーニバル」とかそういうタイトルにしておけ。連作であろうと、第n話という表示をしないのであれば、「その一冊だけ読んでもちゃんと楽しめる」ようにするのが作家の義務である。逆に言えば「そうでない作品には連番を振る」のが出版社の義務じゃないのか?講談社。

俺の大切な人生から8時間以上を無駄にうばった罪は重い。開発案件なら5万円分だぞ。以下に完全なネタバレを書くが、ネタバレというほどの謎解きは何もないので、安心するが良い。あるいは、唯一の謎がばらされるので絶対みるなというべきなのか?まぁ、どっちでもいいや。

 

 

ってなわけで、ネタバレ内外で散々けなしたけど、私はこれを完成した1つの作品とは認めません。連作の1部としてなら、40点ぐらいはつけてもよいけど。これほど読む努力が報われなかった作品はないな。

 

 

何この半透明〜。じったーい。