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のだめカンタービレ最終楽章 後編

監督:武内英樹/ 原作:二ノ宮知子/ 62点

■サービス満点だが細部にわたらず

 

「のだめカンタービレ最終楽章 後編」は、同TVシリーズの映画版であり、前作「のだめカンタービレ最終楽章 前編」の完全な続編である。前編を見ていないと何の事やらさっぱりわからないし、見ていると前作からの引きのあまりにあっけない収拾っぷりに唖然とするだろう。

 

後編も相変わらず原作に忠実。細かい台詞や出てくる料理まで忠実に再現されており、原作ファンを喜ばせること請け合いである。ただ、徐々に物語がシリアスになってきた都合上、原作の大量のコンテンツを処理しきれない部分もあって、消化不良気味。原作を読んでいない人には終盤ののだめの心の正確な理解は難しいだろう。シュトレーゼマンがいい人っぽく見えるし、オクレール先生の真意も伝わり難い。

分かり難くなった終盤をカバーしようとしたのか、ラストになって原作にはなかった説明的な「決意表明」台詞があったりして、うーんと考え込んでしまった。何かねぇ。真一のような最初から知性派の人物に、そういう正論をまっすぐ語られると、気恥ずかしいと言うか、しつこいと言うか、とにかく聞き苦しいのだ。そのあたりは、のだめを使うのか、脇役の子供を使うのか、なんでもいいから、ぼのぼの効果で誤魔化して欲しかったように思う。

 

とまぁ、のっけから厳しいことばかり書いたが、正直自分は楽しく見せてもらった。こんな映画どうせ原作ファン以外は殆ど見ないのだから、あれでよいのだ。と前編でも書いた気がする。本代と映画代を払った気前の良いお客さんほど楽しめるつくりになっているのだから、特に不満をもつ理由はない。何よりも原作で「凄い」と評されていたのだめの演奏がどのようなものなのか、実際に聞けるというそれだけで、本映画を見る価値はある。特に終盤の演奏は鬼気迫るもので、音楽の知識のない自分のような人間でもはっとさせられるような、素晴らしいものだった。

 

多分この映画は、「原作を読んだ人が、映画館で楽しむ」という意味と、「原作の後、映画を見た人が、もう一度原作を読み返すと、音が背景に流れる」という意味の2通りで楽しめる作品なのだ。この手の「道を究める系」の作品にありがちな、どろどろとした人間関係も非常に少なく、実に爽やかな作品だと思う。