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のだめカンタービレ最終楽章 前編

監督:武内英樹/ 原作:二ノ宮知子/ 63点

■ターゲットを絞った作品

 

「のだめカンタービレ最終楽章 前編」は、同TVシリーズの映画版である。本シリーズ実写化のよさといえば、なんと言っても、実写化キャストの漫画原作への類似度だろう。上野樹里にいたってはあまりにも異常なシンクロ率で、もはやのだめ口調と上野樹里がイコールで結ばれてしまい、普通の口調が想像できないぐらいである。

本映画版でも、ビックリするぐらいのはまり役が多々登場する。なたぎの悪ふざけはどうかと思ったが、チャドのバソンは絶品。顔を見た瞬間に、あいつだ!とわかるぐらいに原作にそっくりである。

 

原作リスペクトは配役だけにはとどまらない。どのシーンも、正確にどのエピソードのどのコマかわかるぐらいに再現されており、原作ファンは「わぁ、あそこだ!」とそれだけで狂喜することが出来る。自分のような原作ファンには見ているだけで楽しい映像のオンパレードなのである。

しかし冷静になってみると、原作ファン以外にこの映画が理解できるのか?と言う不安は拭い切れない。説明は少ないわ、展開は速いわ、TVシリーズのことはすべて既知の事実として扱われるため、原作を読んでいない人には何の話か全くわからない作品だろう。そのうえ大した脚本的盛り上がりも無いまま、一番嫌な部分で幕を迎えるため、後編が見たいような、どうでもいいような、複雑な気分になる筈だ。

 

とはいうものの、果たして本作を見に来る人の中に、原作を読んだことの無い人間がどの程度いるだろうか。おそらく5%もいまい。そんな少数派の為に完成度の高い原作を曲げるよりは、原作リスペクトに徹したほうが反感が少ない、というのは当然の決断ともいえる。TVの最終回を映画で見せるという、最近の金儲け主義にはウンザリはするものの、本作品の場合、映画館の大音量で演奏が聴けるのだから、それほど損した気分にはならないだろう。

 

とまぁ、以上に挙げたような理由で、高い点数はつけなかった...が、個人的にはとても楽しかった。原作ファンなら評価なんて気にせず楽しく見ればよいと思うのだ。