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プラダを着た悪魔

監督:デヴィット・フランケル/ 原作:ローレン・ワイズバーガー/ 97点

■フラットで気持ちの良い結末

 

「プラダを着た悪魔」は一時期ビックリするほど話題となった、超メジャー映画である。性格がひねているbaristaはこの手の作品をなかなか見ない。しかし、食わず嫌いは良くないなと、毎回思わされるのだ。

 

ファッションの頂点に立つランウェイ社内は、「2号・4号以外は服じゃない」ぐらいのファッション至上世界である。そこに「別の会社に転職するため」という不順な目的で入社したアンディが適応できるはずもない。おまけにそのアンディといえば、夜中にチーズサンドをバクバク食べて服は6号、「人間は中身が大事」と堂々と語る、全くファッションに興味のない女だからたちが悪い。

 

正直、冒頭を見た感じでは、そんなに面白い映画になるとは思えなかった。なんせコーディネートに悩む最中に「同じ物にしか見えない」などとのたまう時点で、主人公の評価は「ファッションセンスがない」ではなく、「空気がよめねぇ」に成り下がってしまうため、感情移入をしかねるのだ。おまけに、社の女王であるミランダは注文があまりにも滅茶苦茶で、こちらも当初は「仕事が出来る女」というより「無茶な女」に見えてしまうのだ。

したがって、冒頭をみた時のbaristaの感想は「女性の変身願望という一番の弱点を見事に突いた作品だったから、売れたんだろうなぁ」という物であった。しかも、主人公のアンディはセンスがない役ではあるものの、女優のアン・ハサウェイが最初からあまりにも美人であり、「変身物にしてはギャップが少なすぎる!」と感じ、そのあたりも納得がいかなかった。

 

しかし、この映画の見所は全然そんな所にはなかったようだ。以下、映画中のエピソードや、エンディングにまつわる重大なネタバレを含みます。

 

ネタバレ内に書いたように、本作品は「ベタな作品」のように見えて、実はそうではない。脚本が非常に良くできている。一番よかったのは、主要人物の誰も他人の「優先度」を卑下していないことだ。そのあたり、G.I.ジェーンをみて不満に思っていた点と間逆で、「そうそう、そうなんだよ!」と納得しながら観ることができた。自分と違う価値観を互いに認めあうというのは本当に気持ちのよい事なのだ。