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アイアンマン

監督:ジョン・ファヴロー/ 原作:スタン・リー/ 93点

■手先の器用さがもはや超能力のような...

 

アイアンマンは昨今乱発気味のマーヴルヒーロー物の実写化作品のひとつである。そんな二匹目のドジョウがうろうろしていると思うんじゃねぇよ、と思いきや、これがきちんと面白いから困る。ジャパニメーションはもはや世界に誇る文化の一つだが、ハリウッドのマーヴル実写化も世界に誇れる文化だと思う。というか、マーヴル含むアメコミが独自の非常に濃い文化を作っており、貯金がたまっているせいかもしれんが。

 

この映画のストーリーを説明するのは非常にたやすい。主人公スタークは巨大な軍事企業の社長である。意気揚々と新作武器のプレゼンに出かけた所、ゲリラに襲われ、心臓に大怪我を負い、捕らえられてしまった。ゲリラ達は、逃がしてほしければ、新作の武器をその場で作って提供しろという。で、監禁されたスタークは、自らの心臓の怪我を治療してくれた科学者とともに、注文された武器を製作する...フリをして、脱出のためのパワースーツを作成。これがアイアンマン初号機である。

で、後はまぁ本当に悪い奴とスタークが対決したり、ほのかな恋愛ムードが漂ったりするだけなので割愛。いや、その辺の詳細は気が向いたらこのあとネタバレ内ででも。

 

上記のように非常にわかりやすいヒーロー誕生ストーリーではあるが、それなりに社会へのメッセージなんかも込めていたりして、浅い作品ではない。以下、ネタバレゾーン。

とまぁ、ネタバレ内のようにアメコミの定番としてアメリカの軍隊への批判はさらっと組み込まれているわけである。当然、アーク・リアクターは現実世界における原子力と同じ立場にあるものだ。平和利用すれば膨大なエネルギー源であるが、一歩間違えば大量の人を殺す武器となりうる存在なのである。

 

 

本作品は登場人物の台詞や、小物が最高に格好良い。冒頭の「一人は逃したが、うち一人は双子だった」というジョークも良かったが、インセンの最後の台詞にはゾクリとさせられた。ようやく、帰るタイミングを見つけたんですね、貴方は。「不器用アーム」との会話も最高。多分初期に作った作品でとても大切にしているのだろう。あまり感情を見せない、ハードボイルドなスタークの機械への愛情が見て取れる。バトー×タチコマが好きな人なら、この感想を共有できると思う。

中でも秀逸だったのは、秘書であるペッパーがスタークに送った記念品の刻印。ペッパー役は物語の構造上、あまりパッとしない女性に見えるよう、人選&メイクがなされているのだが、この刻印を見た瞬間に美人に見えた。そのセンスはクールすぎる。以下詳細。映画を見終わるまで、決して読むなかれ。

 

以上のようにこの映画、アメコミ作品でありながら、ターミネーターやロボコップと同様、前知識のない一般人が見てもちゃんと面白い素晴らしい出来だと思う。映像もストーリーも良くできているので、みんなで楽しく鑑賞できるだろう。

 

本作品が気に入った人はアイアンマン2も合わせてどうぞ。1ほどの名作ではないですが、なかなかの出来です。

 


余談:

アイアンマンの主人公スターク役を演じるのはロバート・ダウニー・Jr.である。当初、なかなか主役だけが決まらず、監督が彼を推すも、最初は43歳という高齢でなかなかOKが出なかったのだとか。結果的には彼ははまり役だと大評判。実際最高にクールだったと思う。Wikipediaによると、ファヴロー監督は「ダウニー・Jr自身の波瀾万丈のキャリアが、トニーという役に奥行きを与えた」と語ったそうだ。

で、この波乱万丈のキャリアってのが面白い。彼の父は映画監督であり、彼は幼いころから、名演技で名を馳せた子役俳優だった。が、そのおかげで彼は8歳からマリファナを始め、そのためにたびたび逮捕されており、実刑も受けている。依存症に苦しんだものの、2003年にキッパリとやめたらしく、見事に復帰して、現在の地位を築いたのである。

もっと面白いのが、そういった経歴に関する彼自身のコメント。映画シャーロック・ホームズでのインタビューにおいて、劇中のホームズが常用していた麻薬の濃度について「7%の溶解液は僕に言わせれば薄すぎる」とコメントしたのだそうな。普通なら、そういう話題は避けたり、言葉を濁してごまかしたりする所だ。トニーがクールというより、ロバート・ダウニー・Jr自身がクールすぎる。

(いや、本サイトは麻薬を推奨しているわけではないですよ、断じて)