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ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛

監督:アンドリュー・アダムソン/ 原作:C・S・ルイス/ 65点

■映像↑脚本↓

 

ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女の続編。原作も監督も同じなのでカラーも同じ。相変わらずエグ目の描写は皆無で、お子様も安心なファンタジー。オープニングに戦争シーンが挿入された前作と異なり、単なる日常からのトリップなので安心感も倍増。ただ、それゆえに何であのタイミングで「あちら側」へ行ったのかの必然性は弱い。「角笛」のせいだ、といわれればそれまでだが、パラレルワールドの時間軸がずれているため、必然性がどうというよりは、完全にファンタジー側に舵を切って、文学性を捨てたといって良いだろう。まぁ、そのこと自体は欠点ではない。

 

本作は前作の「後日談」という形となっている。登場する種族などは同じだが、登場人物の多くは差し替え。「あの」フォーンやビーバー君に出会えないのはやや寂しい。前作と絡むキャラクタが少なすぎるため、続けてみた人にはサービスが足りなく思う。まぁ、原作どおりだから仕方が無いのだが。

映像は前作からやや向上。戦闘シーンの見せ場も増えて大満足。ロードオブザリングの功績なのか、一昔前の映画作品とは異なり、弓矢を武器とする際の戦い方が華やかで良い。一方、長男の立ち振る舞いにはいまひとつ華が無い。重装兵が盾と剣をぶつけ合う戦いは単なる酒場の殴り合いに見えてしまうので、日本人の感覚にはそぐわないのかも。やはり、「かわす」剣闘が見たいのだ。

で、ストーリーはその後どうなっていくのかというと、特に何もなし。ロードオブザリングしかり、本作しかりだが、物量で圧倒することに終始する戦闘は美しくない。それでは主人公のカリスマが見えないのでは?いや、戦争においてカリスマなんかいない方が普通なのは知っているけれど、300(スリーハンドレッド)などの方がコンセプトの時点で美しい。ただまぁ、「王の帰還」よりフラストレーションはたまらない。気楽なので若年層にはこれで良いのかも。

 

ただし、台詞に関する重大な疑問あり。おそらく原作どおりなのだとは思うが、前作を見た際に書いた、「try it」の素晴らしさをスポイルするような台詞があるのだ。それはラストシーンの長男と長女の台詞である。それを言ってしまうとファンタジーではなく文学になってしまうと思うのだが。

そこが冒頭に「そのこと自体は欠点ではない」と書いた理由である。前作は「文学だとみんな思っているのだが、ファンタジの要素を残した」点を評価したのだが、本作は「ファンタジという前提で始まったのに、文学に引き戻される」のである。この気持ち悪さは続編で解決されるのかもしれないので、当面苦情は飲み込んでおくが、.....なんだかなぁ。「異世界」の立ち位置がファンタジ作品の肝だと思うのだけれど....。