ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女監督:アンドリュー・アダムソン/ 原作:C.S.ルイス/ 75点
ロードオブザリング以来乱発された名作ファンタジーの映像化のひとつ。ファンタジー作品としては王道の構造である。このころのヨーロッパにおいて逃避したい現実やトラウマの原因というのはやはり戦争なのだろうか。相変わらずの戦争描写にちょっと「またかよ」と思った。このあたりは「戦争を知らない子供達」の発想なのかも。しかも、戦争シーンは気合が入っていないのが見え見えで、パンズラビリンスやハンニバルライジングのそれが、そのシーン単体でも映像的に美しかったのに対し、「わぁ、合成だなぁ」という印象。しかし、子供向けの映画である本作においては残酷なシーンを省いたという点では好判断。この傾向は最後まで続くので、子どもに安心して見せられる。 厳しい書き出しだが、作品全体としての印象は良好。兄弟喧嘩や困ったアイツにイライラしたりするものの、わかりやすい王道を貫いた脚本は万人向けで良い。そもそもこの手のファンタジー作品につまらない捻りなんかみんな期待していないはず。映像もロードオブザリングなどに比べ、グロいクリーチャーの群れではなく、わかりやすいRPGの住人が勢ぞろいといった感じで楽しい。ただし、特殊メイクではなく、CG100%という印象の映画なので、なんだか現実味を感じないのも事実。同じCGでもディズニー的.....とここまで書いて思い出したけど、配給はディズニーだった。サモアリナン。 終盤の盛り上がりについてはもうちょっと頑張って欲しいな。戦闘シーンで見せ場が欲しい。そのあたりのヒヤヒヤ描写に関しては宮崎駿御大に学んで欲しい。あの人が描くコンテは何にだってヒヤヒヤする。まぁ、ただ、現実世界からトラバーユしてきたばかりの主人公があまり活躍しても仕方が無いので、あれぐらいの方が現実的ではある。その辺は好みの問題か。ただし、アイツのあのシーンだけは「活躍」にさせないと意味が無いと思ったのだが。 でまぁ、この手の作品の肝は実際その世界はあるの?ないの?ってあたりに落ち着くわけだが、この作品の場合は4人が、というところで夢のある方向に傾けているのが魅力でもあり子供向けな点でもある。ただし自分は、子供向けといわれようとも、終盤のあの人の「Try it.」の台詞にキュンときた。子供向け万歳である。一方逆の視点だった作品がパンズラビリンスではあるが、それが悪かったのかというと、あっちはあれで明らかに成功。パンズラビリンスを一気に文学的な作品に押し上げていたと思う。 ってなわけで、本作、ファンタジー好きには80点。そうでない人には70点ぐらいかな。外しはしないので普通に晩御飯を食べながら家族で見たらよろしいかと。ロードオブザリングは飯が不味くなるので、食事中は見ちゃ駄目です。グロいんだもん。
Copyright barista 2010 - All rights reserved. |