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論理と感性は相反しない

作者:山崎ナオコーラ/ 原作:/ 63点

■小説にエッセイを代弁させた作品

 

「論理と感性は相反しない」は山崎ナオコーラが描き下ろしなのに連載っぽい体裁で描いた、連作小説作品である。山崎ナオコーラといえば「人のセックスを笑うな」で有名な作家であるが、僕は映画版を途中から見たことがあるだけで、原作は読んだことがない。ただ、深夜のケーブルテレビで見た映画は、とても不器用な主人公を描いた切ない物語で、過激なタイトルに反してとても穏やかだった。

金原ひとみがそうだったように、過激な方向性の描写は不器用な恋愛観の象徴の気がしてならない。奔放な人の恋愛描写って逆にあっさりしてたりする。多分、少年漫画が付き合うまでをテーマとしているせいで、それを究極目的であるかのように、命がけの描写をこころみるのに対し、少女漫画が恋愛に擦れているがゆえに、付き合うまでが2ページぐらいで終わってしまうのに近い。

 

さて、そんな先入観を持って読んだ本作品だが、意外と近いなと感じた。金原ひとみが年をとったらこんな感じじゃないのかなと。物語は全て小説という形だけれど、あくまでこれは山崎ナオコーラ自身の物語であって、小説の形のエッセイだと思う。無論どんな小説だって、作家の内面と無関係ではいられないものだけれど、本作品の場合はそれが色濃いように思う。

 

ってなことを書くと、女のベタベタの恋愛観を読まされる作品なのかと誤解されそうだが、其々の作品自身はちょっと斜に構えた感じのライトな作品で、手軽にひょいひょい読むことができる。気分転換にさらさらっと読むのには良い感じ。嫌いじゃないです。これ。