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幽談

作者:京極夏彦/ 原作:/ 60点
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■あっさり緩やかな心地悪さ

 

「幽談」は京極夏彦による、創作「ちょっと怖い話」を集めた短篇集である。京極氏の中での「怪談」との住み分けはよくわからないが、全体に流れる、奇妙な空気は一般的な怪談とは確かに違う。

じゃあ具体的に何が違うのかというと、一番大きな違いは、主人公たちに当事者感覚が希薄なことであろう。何だか気持ち悪いなぁ、みたいな状況を他人ごとのようにつらつらと描く姿は、シュールな漫画作品のよう。一般的な怪談のような「ひえぇー」って感覚ではないのだ。おそらくはこの「幽かに怖い」感覚から「幽談」なのではないかなと思う。

凄く好みのものもあれば、なんだかな、って作品もあって、手放しでお薦めとは言いがたいかな。落ち着いて読みたい作品です。

 

【手首を拾う】

別れた妻と7年前に訪れた旅館に再び足を運んだ主人公。彼は七年前、旅館の庭であるものを拾った(あるものとか誤魔化してもバレバレな気もするが)。パッと観、山もオチもない話。

なかなか評価に悩む作品。個人的にはちょっと退屈だった。

 

【ともだち】

有給休暇を取得した男は、三十年前に住んでいた街にやってきた。そこで彼は同級生の森田くんと再会するのだが…。

 

【下の人】

ある女性が寝ていると、下から奇妙な音がする。泣き声が聞こえたりしてうるさい。友達に相談しても撮り合ってくれない。とても普通の物語のようだが、一箇所おかしな所がある。

あまりに呑気すぎる対処にちょっとおもしろさを感じてしまう作品。でも現実味のない恐怖への対応って意外とみんなこんな感じじゃないのかなぁ。

 

【成人】

ある男がある「丸いもの」を………した話である。この薄気味悪い感触は好み。

 

【逃げよう】

下校中の小学生はある緑色の奇妙なものが追いかけてくるのに気づく。それは回りにいる友だちではなく、他でもない「僕」についてくる。やがて彼はその緑色のものから逃れるため、あまり仲良くない祖母の家に逃げこむのだが…。

先に進めば進むほど、何が怖さの中心なのかがわからなくなっていく感覚が怖い。とりとめのない悪夢のようだ。本短編集中で一番気持ち悪い作品(いい意味で)。

 

【十万年】

「見える人」をテーマにした作品だが、まさかこんな切り口があったとは。SFのような鮮やかな締めは、文学的で気持ち良い。これも好きだなぁ。

 

【知らないこと】

隣人が変人である。そういう作品だ。世の中にはいろんな怖いものがあるけど、リアルな隣人の怖さってのは、ちょっと飛び抜けている。

 

【こわいもの】

世の中に怖いものと呼ばれるものは沢山あるけれど、どれもこれもたかが知れている。そんな風に語る男は、ある男からとても怖いものを譲り受けようとしていた…。なんだか「夢十夜」の悟りを求める侍の話のようだ。