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四畳半王国見聞録

作者:森見登美彦/ 原作:/ 56点

■読む順番を間違えたかも

 

「四畳半王国見聞録」は、大学に在籍していても殆ど通わない、或いは通っていても授業には出ないという、平均的な駄目大学生たちの姿を、森見登美彦独特のファンタジックな文体にて描いた作品である。全編に渡り登場人物こそ共通しているものの、収録されるそれぞれの短編の主人公は異なり、それぞれ独立の物語をなしている。

先日読んだ「木暮荘物語」よろしく、それぞれの物語にはつながりがある物の、登場人物全体が似た匂いの持ち主であるがゆえに、章をまたがっての面白さのようなものはあまりない。どちらかと言うと、ここの物語の面白さや、文体・表現の面白さ自体を楽しむ作品だといえよう。

 

ただこれ、歯に衣着せずに言えば、単体として楽しむにはちょっとインパクトが弱い。忘年会を企画する話の落とし方だとか、数学氏の恋愛の話だとか、好みのエピソードもあるのだけれど、ただそれを全部読んだ時に、脳内麻薬がバシュっとでるような快感がないんだな。

で、何でかなぁと考えたのだが、これファンサービスのスピンオフ短篇集って位置づけなんじゃないのかなぁ?というのも、同作家の作品に「四畳半神話大系」ってのがあるのだが、そちらは既にアニメ化されているらしいのだ。あと、本作品の登場人物の中に、先日読んだ「夜は短し歩けよ乙女」のあの人達が登場している当たり、どうもそういうサービス作品という気がしてならない。

 

そんなわけで、全部読んだ後での評価は分かんないけど、単体として読むにはちょっと物足りないという評価にさせていただきました。物凄く面白い部分もあるんだけどね。読む順番を間違えたかも。