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遠回りする雛

作者:米澤穂信/ 原作:/ 63点
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■人の死なない日常ミステリ

 

「遠回りする雛」は高校生の少年少女たちを主人公とした、人の死なないミステリである。本作品はどうやら「古典部シリーズ」と呼ばれるシリーズ作品らしく、主人公たちはみな、古典部という何をやっているんだかよくわからない部活動をやっている。主人公の少年は、非常に頭脳が明晰だが、なるべく手を抜くことを信条としているような男であり、その優れた頭脳をいかに面倒な事をしなくて済むかのためにのみ費やしている。

 

作品は短篇集になっていて、第一作目を読んだ際には正直ちょっと気持ち悪い少年に見えた。ごちゃごちゃと無駄口が多く、何を考えているのかわかりにくい回りくどさには、西尾維新の書く「いーちゃん」に近い匂いを感じたからだ。「これはきっとこの少年の能力を魅せるための導入部に過ぎず、ここから猟奇的な殺人とかが起きちゃうぞ」と思って読み続けたのだが、冒頭に述べた通り、そんな展開には全くならず、日常のちょっとした謎を種明かしするだけという、いい意味でほのぼのとした物語となっている。どちらかと言うとミステリと言うよりは文学色が強い感じ。

特にタイトルにもなっている最後の「遠回りする雛」は脳内映像的に美しく、読んでいて気持ちのよい作品だった。映画化すれば良いのにと思ってさっきwebを調べたら、既にアニメ化されているようだ。ちょっとイメージと違うけどまぁ、よいか。

 

んなわけで、本格的なミステリを期待すると肩透かしを食らうものの、人の死ぬ物語を読むのはつかれた人には箸休め的にお薦め。同人誌など二次創作をやりたい人にも向いてそう。