ミッキーマウスの憂鬱

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■描写濃度は面白いけど予定調和か

※本作品は「中の人などいない！」を貫きたい、ディズニーファンは読んではいけない作品です。書評だって読まないほうが良いので、熱烈なファンはここでお帰りください。

ミッキーマウスの憂鬱はディズニーランドに準社員として雇用され、裏方として働くことになった青年の物語である。彼はゲストとして訪れた際の夢を追いかけてディズニーランドへの就職を希望したのだが、その裏側はと言えば、当然ながら驚くほど厳しい世界で、彼はその厳しい現実に幻滅しつつも、次第に職業意識を高めてゆく。

物語は中盤の「ディズニーランドにとって非常に重要なあるもの」の消失事件をきっかけに急加速する。その「あるもの」が無くなった原因や、現在の在り処を探し出す、ややミステリ的展開へと進むわけだ。

本作品の魅力は何と言っても裏側描写の詳しさだろう。どの様にしてあの夢の国が運営されているのかが克明に分かるようになっている。なので、自分のような薀蓄が大好きな人には非常に向いている。例えば、ディズニーランドで大きく成功したのは日本が初で、海外のランドはそれに追従した、なんて情報は非常に興味深かった。反面、冒頭に述べた通り、ディズニーに夢を抱いている人は絶対に読んではいけない作品となっている。少なくともディズニーランドに行ってぬいぐるみに抱きつくレベルの人は、この本を読んではいけない。

よくこんな小説をディズニーが承諾したなぁと思って、本の奥付を確認したが、特に取材協力や引用文献等にディズニーの記載はなかった。ってことは、公式に得た情報ではなく、実際にバイトしていた人とかから聞いた情報から書いてしまったってことなのか？？漏らした人、訴えられたらビックリするぐらいのお金を請求されると思うのだが、大丈夫なのか？

本作品の難点は、上記幻想を打ち砕いてしまう問題だけでなく、物語があまりにも予定調和すぎる事だろう。主人公があのキャラクタで準社員として入った瞬間に、物語はこの方向にしか転がりようがない、って方向にそのまま突き進んでしまうのだ。

とはいえ、ストレスの貯まる展開は少なく、テンポよく物語が進むため、よみ味は非常に良い。意外と映像化したら面白い作品なのではないかと感じた。ディズニーが「魔法にかけられて」という素晴らしい自虐映画作品を作ったことがあるが、同じようにディズニーが作ったら死ぬほど素晴らしい作品になるだろう（絶対無理だけど）。

そんなわけで、ディズニーランドの裏側を物語形式でサクサク読みたい人におすすめの作品。移動中に呼んだりするのにはちょうど良さ気ですよ。

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