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万能鑑定士Q

作者:松岡圭祐/ 原作:/ 86点
【送料無料】万能鑑定士Q [ 松岡圭祐 ]

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価格:1,680円(税込、送料別)

■大味だが面白い!

 

長く小説や漫画を読んでいると、タイトルだけでおおよその内容が想像できるようになるものである。例えば「万能鑑定士Q」というタイトルなら、「ちょっと変わり者の三十路も終盤の男が鑑定士をやっていて、そこに様々な相談人がやってくる。それぞれの物語は短編になっていて、古い鑑定物に関するちょっとハートフルな思い出話なんかを交えた物語が数話、様々な薀蓄とともに語られる。で、最終的には殺人事件とか、それぐらいの規模の事件に巻き込まれ、主人公が危険な目にあって「俺はアクション向きじゃないんだってば」みたいな、ちょっと情けない中年の魅力を出したりしながら、若い女の子との淡い恋愛を交えたフィナーレと向かうわけだ。(ギャラリー・フェイクの読み過ぎだとか言わない)

 

で、本作品はというと、これが、全然、全く完全に異なる。(前もこういうレビューを書いた気がするな)

 

以下、物語の大きな構造に関する説明。何も知らずに読んだほうが面白いので、未読の方は注意。


物語の最初の語り部である小笠原は週刊誌の記者である。彼は巷を騒がせてていた、通称「力士シール」の正体を暴こうと、ガードレールいっぱいに貼り付けられたシールを、廃棄となるガードレールとともに借り、鑑定にかけることとした。しかし、マスコミの間で話題となっているシールの鑑定で失敗すれば名前に傷がつくからと、有名所の鑑定士は軒並みその依頼を断ってきた。

 

そこで彼は、ネットで近郊の鑑定士を検索し、「万能鑑定士Q」という謎めいた店を発見した。万能という名前から、数名の鑑定士が集まる大きな事務所を想像していた彼はその小さな店構えに、そして意外な店主に驚くこととなる。

店主は「凜田莉子」という、二十代前半の見目麗しい女性であった。それもギャラリーフェイクにおける三田村女史のような、知的で大人の色気を持つ女性、というわけではなく、知的ではあるもののあくまで真っさらなイメージのどことなく不思議な女性だ。彼女こそが本作品の主人公である。

 

小笠原と莉子が力士シール事件(実はこれ、現実に存在した事件がモデルである)を調査しているうちに、莉子はある小さな犯罪の影に気づく。それを未然に防ぐべく警察に通報する二人だったが、その事件は日本全土を揺るがすような大事件の末端に過ぎなかった。かくして物語は壮大なミステリへと変貌するのである。

 

以下、後半の設定に触れるためネタバレ内に書きます。

 

ってなわけで、予想外の方向に突っ走って、結果としてちゃんと面白いミステリに化けるという、ちょっと異色の作品。お勧めですよこれ。