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SPACE BATTLESHIP ヤマト

監督:山崎 貴/ 原作:西崎義展/ 5点

■誰が特をするのかよくわからない作品

 

誰もがひどい映画になるはずと予測し、流石に映画館にはいかなかったのだが、DVDレンタルで見る分にはまぁいいだろう、という気分にもなれず、TV放映する事になったから見ようと思って録画したものの、中々手を付けず、見始めてからも3回に分けて、別の作業をやりながら漸く見終わったという、ある意味伝説的作品である。なるべく貶すレビューはやめようと思っていたが、この作品の良い所をピックアップするのはそれなりに骨の折れる作業になりそうである。

 

アニメの実写化に失敗した伝説の作品といえば、誰もが「デビルマン」を思い出すだろう。あれは見事なまでに大失敗の映画だった。ストーリーはアニメではなくシビアな原作を目指したにも関わらず説明不足だったせいで、ただただ後味の悪さだけが残った。戦闘シーンはどこのハリウッド版ゴジラかっていう微妙な出来栄えだった。とにかくラジー賞も裸足で逃げ出すほどのすごいインパクトの「映画」だった。

一方本作品を観た感想は「映画じゃないなこれ」って物だった。そもそも映画ではないので、面白い映画だとか面白くない映画だとか、そういう評価が当てはまらないのである。

本作品は学芸会としてみるべきである。そこに古代進や森雪は登場しない。木村拓哉や黒木メイサや柳葉敏郎や西田敏行たちが、ヤマトの衣装を着て、中々の力演を見せつけている学芸会のビデオ作品である。従って、「あんなの古代進じゃねぇ」なんて評価は間違いである。「キムタク、結構古代進っぽい雰囲気出してたじゃん」と暖かい目で見るべき作品である。真面目な話。

この学芸会ムードを強調している理由の1つは、あまりに個性豊かな俳優を選びすぎたせいだと思う。もっと戦争映画っぽい地味なメンバで構成したほうが、旧作ファンは喜んだのではあるまいか。あと、演技が全部歌舞伎的なのも大きな問題だと思う。全員何の台詞を喋るときにも見栄でもきってるのかってぐらいにわざとらしい。しれっと爽やかに、CM中のリリー・フランキーぐらいのさりげなさで演じてもらえないものだろうか。演劇が大袈裟でも良いのは、ト書きや心理状態の独白が使えないメディアだからである。同じ技法を映画に使おうとしては失敗するのも当然である。

 

巷では凄いのはCGだけという噂があるようだが、それも半分間違い。滑らかすぎてファンタジーな色合いのCGはとてもじゃないが実在する戦艦には見えない。しかしまぁ、そこはアニメ原作だからと目をつぶったとしても、動きが壊滅的に駄目だ。大きなものはゆっくりしか動けない。重力下での加速度は一定なので、特に下向きの動きは速くならない。その辺りを考慮しないと物の大きさが感じられないってのは古くからのアニメ界での基本中の基本である。監督においては古い特撮映画、ウルトラマン等からもう一度勉強しなおして欲しいと思う。

 

ところで僕はヤマト原作を見ていない。なので、ストーリーに関して言うことは殆ど無い。ぶつ切り過ぎて感情が伝わらないとか、根本的に何を言ってるのか理解できないとか、いろいろ言いたいことはあるけど、ストーリーに対する意見は原作ファンのためにとっておくのが礼儀だと思うのだ。以下に、原作ファンとしての意見を述べたいという方はメールいただければ記載します。本気で。

 

ちなみにこの監督、ALWAYSとか、BALADDとか、実写化専門と言って良いような監督である。ちなみに現在はハリウッドがアニメ化でコケたドラゴンボールを再度実写化すべく活動中だという。映画ファンはいろんな意味で期待しよう。